One and One

愛じゃなきゃ、なんなのさ!

 疲れた、とリリアは制服を脱がずにベッドに飛び込んだ。ふかふかの滑らかな手触りの布が身体を包む感覚にほっと一息つく。広いベッドの上で寝返りを打ち仰向けになったリリアは、ふとこちらを見つめているマレウスの方へと視線を移した。
 どうしたんじゃ、などと言う必要はないくらいにマレウスの視線はベッドに飛び込んだ行儀の悪いリリアへの批難に彩られている。それを無視してベッドの上へ呼び寄せれば、彼はため息を吐きながらも腰を下ろした。
「……今日は、楽しかったか?」
「ふふ、もちろんじゃ。お主らの愛、たっぷり伝わったぞ?」
 マレウスの角張った指がリリアの細いさらさらとした髪を梳く。問われた言葉に満面の笑みを浮かべながら彼の腰に手を回してぐりぐりと額を押しつけた。制服を脱がない行儀の悪さと己の滅多に見せることのない甘えた姿にマレウスは複雑な表情を見せており、リリアはくつくつと喉を鳴らして笑ってしまう。咎めるように頬を軽く引っ張ってくる相手を気に留めず肩を揺らせば、彼は諦めたのか再びため息を零しながら隣で横になる。
 同じ体勢になったため、マレウスの腰から手を離してリリアは彼の頭を胸元に抱えなおした。それから額に触れるだけのキスを落としていく。
「お主らがわしの誕生日を祝ってくれて本当に嬉しかった。あんなに楽しい誕生日は初めてじゃった」
 シルバーが張り切ってくれた料理はとても美味しく、セベクはその感情の豊かさを存分に発揮しながら場を盛り上げてくれた。少し空回りしていた気もするが、それもまた彼の愛嬌だろう。息子同然の子が祝い、楽しませようと行動してくれたことが嬉しく、リリアは柄にもなくはしゃぎ回ってしまった。魔力で花火のようなものを作っては打ち上げ、部屋を煌びやかに彩ったのは流石にやり過ぎだったかもしれないが寮生も喜んでいたので問題はないはずだ。一部天井が焦げたがマレウスがすぐさま直したので影響もなく、おそらく学園長にもバレてはいないだろう。
「良かった、リリアが楽しかったならそれで良い」
 ぽつりとマレウスが零した言葉は安堵に満たされている。シルバーからこっそりと教えられたのだが、リリアの誕生日を祝おうと最初に言い出したのは彼だったらしい。こちらに内緒で計画を立て、口下手なのに寮生にまで声を掛けて──寮生たちにとっては声を掛けられたというよりも拒否権のない命令みたいなものだったのかもしれないが──人を集めてくれた。式典のような厳かなものではない、気軽で賑やかなパーティーが嫌いじゃないというリリアの言葉を覚えていてくれたのだろう。
 自分のために行動してくれて、けれどそれを決してひけらかさずただ純粋に己のことを考えてくれた恋人にリリアは額から目尻、頬にキスをし、最後に一瞬だけ唇を重ねる。
「疲れているんじゃないのか?」
「そうだのう、このまま寝ればきっと心地よい夢を見れる程度にはな。けれど、それをわかっていて、わしはわざわざお主の部屋に訪れたんじゃぞ? これ以上の説明が必要か?」
「いや……そう、だな」
 ゆっくりと首を横に振ったマレウスはリリアに覆い被さる。首筋を撫でた指が制服のリボンを解いてからワイシャツのボタンに触れた。
「お主に愛されることが、わしにとっては一番のプレゼントじゃ」
「加減が出来なくなるようなことを言うのは止めてくれ……」
 おそらくマレウスも慣れないことをしたという緊張のせいで少し疲れているのだろう、少し困ったように呟かれる。それを聞いてしまうと休ませてあげたいという感情がリリアにも湧いてくるのだが、今日は我が儘を言っても許される日のはずだ。これ以上抱かれたいという気持ちを抑えるなど出来はしない。
「くふふ、わしらの仲に手加減など不要じゃろう? そもそもパーティーの最中にあんな愛おしそうなものを見るようにわしに視線を向けておいて今更じゃ。わしをいっぱい愛して、わしにいっぱい愛されるがいい」
 リリアはマレウスのうなじに腕を回してゆっくりと瞼を閉じ、キスをせがむ。瞬きの間の逡巡ののち、彼はこちらの唇を食むように口づけた。
 肉厚な唇の弾力を楽しむように下唇を甘噛みされたあと、マレウスは歯列の間から艶かしい舌を滑り込ませてくる。唾液でぬめぬめとしている舌が口内の輪郭をなぞり、その動きと唾液の冷たさにリリアは背筋がぞくぞくと震えた。牙になっている奥歯を根元から先端まで舐め上げられ、また、マレウスは鋭い牙でわざと舌先を切って血を飲ませてくる。魔力の塊のような血が喉を通るたびにリリアの血が沸騰しているかのようだ。許容を越えた魔力が解放されたいと全身を駆け巡り、その反応は身体に如実に表れた。
 屹立し始めた性器をマレウスの股間に押しつけるように身体を密着させながらリリアは彼の舌に己のそれを絡ませる。互いの舌が上や下へと蛇のように交わり、分泌される唾液が淫靡な水音を立てた。
 マレウスは右手でリリアの後頭部を押えながら左手でこちらの服を脱がしていく。身体を浮かせて彼が脱がしやすいように手伝いながらもキスを止めることはなく、時間をかけて肌を露出させる。そのもどかしさがお互いを昂ぶらせ、リリアが全裸になった頃には性器は完全に勃起していた。
「は、あ、は……ふ、ふふっ」
 己のはしたなさにリリアは思わず笑い、きょとんとした様子のマレウス幼い態度に得も言われぬ背徳感を覚えながら中指を親指の根元に滑らせて音を鳴らす。次の瞬間には彼の服も全て消え去っており、脈動している赤黒い性器が目に入った。マレウスの性器はまだ勃起しきっていないとはいえ充分に大きく、生唾を飲み込む。
 服を脱がされたマレウスは気恥ずかしそうにしているもののリリアを咎めたりはしない。甘えたように名前を呼べば彼は仕方がないなという風に見つめてきて、それから小さく微笑んだ。こうして甘えると喜ぶマレウスを見るのがリリアの楽しみで、それと同時に甘えられるとなんでも許してしまう彼の甘さを多少心配に思っていることは秘密だ。
「好きじゃよ、マレウス。お主が、誰よりも」
「そんなこと、とっくの昔から知っているさ」
 啄むようなキスを繰り返しながら、マレウスの指がリリアの胸板を撫でた。キスだけで屹立している乳首を指でつまみ、こりこりと擦られる。
「んん! あ、はっ! ん、あ、あ……! あっあっ、んんっ……!」
 快楽を知っている身体はすぐに反応を示し、リリアは艶やかな吐息を零す。求めていた快感、だが物足りなさを覚える刺激に爪先でシーツを蹴った。その間もマレウスの愛撫は止まらず、乳首の先端にあるへこみを指で引っ掻き、乳輪を揉みしだかれる。
「うあ、あ、あ……っ! あっ、そ、それ、ぅ、うう……!」
「どうした、リリア」
 刺激にびくんびくんと跳ねるリリアに声をかけるマレウスの口元は弧を描いており、それから真っ赤に色づいた乳首に優しく息を吹きかけてくる。
「う、あ!? あ、あ、あっ……は、んっ!」
「ふふ、可愛いぞリリア」
「はっ、あっ……! んんん、んっ、ふ、ぁ……!」
「可愛いのはお主の方じゃ」と言いたかったが、血で魔力を受け取ったせいで快感の巡りが早く、リリアは言葉を口に出来なかった。口から漏れるのは理性を失ったただの喘ぎ声だけで、身体はすっかりとろけて力が入らない。
「あっ、やっ、んんっ、ああぁ……! は、はっ……! ああぁっ、いぃ、いい……っっ!」
 マレウスは乳首に顔を寄せ、赤子のようにわざと水音を立てながら吸いつく。火照った身体に唾液は冷たく感じられ、思わぬ刺激に背が反り返った。唾液でたっぷりと濡れている舌で先端のへこみをほじくるように弄ばれ、かと思えば屹立した乳首を元に戻すかのように押し潰される。強く吸い上げられながらマレウスは顔を少しだけ後ろに下げた。
「あ、ああ、そ、それ、あ、あ、あ、あああぁあ!」
 痛みの混ざった快感に上半身を反らせば、まるでマレウスの舌に乳首を突き出すような体勢になってしまう。それを彼が狙ったかはわからないが、浮いた腰を支えるように手を回され、もう片方の手がリリアの性器を握った。
「あっあっあっあっ……!? ひ、ぃ、んっんん……っ! あっ、マレ、マレウス、ぅ……!」
 乳首を甘噛みされながら緩慢な動きで性器を扱かれる。とぷりと先端に膨らんだ水滴を塗り込むようにマレウスの指が竿を上下に動くたび、リリアの口からは悲鳴のような甲高い声が零れた。
 ふいにマレウスは乳首から口を離して嗜虐心を混ぜた笑みを浮かべた。不穏な予感を覚えたこちらが制止するよりも早く彼は上半身を起こしベッドに膝をつく。そして仰向けに倒れたままのリリ アの両足を持ち上げて足が胸につくほどまでに折り曲げた。
「は?! あ、あああ、いやじゃ、いや、マレウス……っ!」
 ひっくり返る直前のような体勢は腰が自然と浮いてしまい、その浮いた臀部を掴んだマレウスは自分の胸元の高さに引き寄せる。ふう、と性器に息を吹きかけた彼は両足の間にいるためリリアの勃起した性器はもちろん、睾丸や後孔も全て見ることが出来てしまう。
 体勢の苦しさより羞恥心が勝ったリリアは足をばたばたと揺らしてもがき、あまりにも必死な行動は内太腿がマレウスの角に当たって赤い線が出来たことにも気づけなかった。そんな児戯にも等しい抵抗を嘲笑うかのごとく、彼は告げる。
「手加減が不要だと言ったのは、リリアの方だろう?」
「ひ、ぃ────!? ふっ、ああぁああ!? はっ、あ、あ! ぐっ、う、ぅうう……っっ!!」
 性器の根元に舌を這わせたマレウスは裏筋を辿るように舐め上げ、亀頭をぱくりと咥える。口の柔らかい肉でリリアの性器を包み込んだマレウスは頬をすぼませ体液を搾り取るように適度に締めつける。体勢の問題で顔を激しく上下に動かせないゆっくりな奉仕は逆に堪えがたいものであり、生理的な涙で顔を濡らす。
「ん、ぐ、ぅ……っ! ふ、ぁっ、んっん、が、っ、はぁ……っ!」
 口内に溜められた唾液が舌で竿に塗りつけられるたびにくちゅくちゅと淫靡な音を響かせ、リリアの耳から脳内までを犯していくようだった。せめてとばかりに瞳を閉じればマレウスは尿道を舌先でほじくったあとカリ首の裏の筋をなぞる。
「あ、ああっ、んんんっ! んくっ、ぅ!」
「愛して欲しいと言っていただろう、僕を愛してくれるとも。ちゃんと見るんだ、リリア。それが愛だろう?」
「あ、ひ、あああっ……! あ、ふ、こ、この……っ! ふっ、あっ、ああああぁあ!?」
 わざと溜めた唾液を先走りと混ぜて竿に流すマレウスは、自分で汚したそれを拭うように唇を押し当てながら根元まで舐め上げた。そのまま体液でびっしょりと濡れている睾丸を軽く吸う。
「あああぁああ……っっ!! う、うううう、う、あっあっあ、こ、これ、え!」
 がくがくと震える身体は最早リリアの理性では止められず、開きっぱなしの口からは唾液と嬌声がひっきりなしに上がる。それでも涙で滲んだ視界の中央にマレウスを見据え、互いの視線が交わった。
 正直に言えばマレウスは口の奉仕があまり上手ではない。間違いなく己の方が上手だと自信がある。だが、リリアは彼が性器を舐めているというその事実だけで達してしまいそうなくらいに感じてしまう。だからマレウスにフェラチオをねだることはほぼなく、それゆえに彼が今回のように突発的に行う行動に弱い。それをマレウスは理解した上でちゃんと見るように指示してきたのだ。
「あ、は、あは、ふっ……! ふっ、はぁ、はぁっ、んっぐっ、んんっ!」
 リリアは顔を涙や汗、唾液でべしょべしょに汚しながら恨めしげにマレウスを睨む。怒りで欲を静めなければ今すぐ射精しそうだ。マレウスに口での奉仕を許してはいるが、彼に己の精液を飲ませる訳にはいかない。それだけは越えてはいけない一線だとリリアは考えている。
 それでも行為は続き、竿を舐めながら先端へと辿り着いたマレウスは亀頭を中心に舐め回しリリアの射精を促す。
「あ、あ、あああああ──っっ! はっ、あ、んんんっっ!!」
 脳天を貫くような快感につま先がピンと伸び、無意識に足が閉じるよう身動ぎしてマレウスを挟んでしまう。少し呻いた声が聞こえたが、すぐさま彼は意地の悪い笑みに変えて刺激を強くする。
 視界の暴力と快楽に正常な思考が出来ないながらもリリアは必死に現状を変える一手を考えていた。どうすれば良い。どうすれば、と乱れた思考で喘ぎながらリリアは魔法を行使する。魔法の鱗片である光の粒子は乱れながらも一つの形となり、それは細い紐となってリリアの性器を縛り上げた。正気ではない思考回路が辿り着いたのは、射精をしたくないなら出来ないようにしてしまえ、という回答だったからだ。
 これにはマレウスも行為を中止するほどに驚き、目を見開いている。それからどうしてリリアが己の性器を縛り上げたのか気づいた彼は眉を顰めた。
「そんなに口で達するのが嫌なのか」
「は、あ……はぁ、ぁ……嫌、というよりも、ふ、はぁ……お主に飲ませる訳には、っ、いかんじゃろう……」
「……僕は別に構わないのに……」
 不服そうに頬を膨らませて上目遣いでこちらを見るマレウスにもリリアは頑として首を縦に振ることはない。互いに譲らない睨み合いの結果、先に折れたのは相手の方だった。
「わかった、リリアがその気ならこちらにも考えがある」
「……ほう、なにをする気じゃ?」
「そんなに射精したくないなら、僕がイクまで我慢することも可能だろう?」
「……ん? んん?」
 なにやら話の流れがおかしな方向に行っているような気がしたリリアは首を傾げる。言いたかったのは精液を飲ませたくないということで、別に射精したくないということではない。わざとこちらの言葉を歪曲して受け取ったマレウスは意地悪そうに口角を上げ、リリアの両足を肩に乗せた。臀部が相手の太腿に乗り上げるような体勢になり、そのまま二つ折りに屈曲するように彼が覆い被さってくる。驚愕で固まっているリリアを尻目にマレウスは体液でしとどに濡れている後孔に性器をあてがった。
「は?! 待て待て! この体勢でか!?」
「リリアなら大丈夫だろう? もっとも、先にイくのを我慢できないというのなら体勢を変えるが?」
「……はっ、若造が。いつも先にイくのはお主の方じゃろう? 中に入るたびに気持ち良さそうな顔をしおって」
「…………なるほど。そのような口が利けるなら手心は無用だな? 存分に、啼くがいい」
 売り言葉をつい買ってしまったことをリリアが悔やんでももう遅く、マレウスの性器の先端が後孔に入り込んでくる。解してはいないものの充分すぎるほどに濡れているそこはほんの少しの抵抗を見せただけで慣れ親しんだ彼のものを受け入れた。
「あっ、あっ、あっ……!」
 カリ首の出っ張りを飲み込んでしまえば後はすんなりと根元まで飲み込んでしまう。内壁が性器の形に拡げられる感覚に、また、通常時よりも深く挿入されるそれにリリアは喉を仰け反らせた。挿入時の角度が変わったせいかずっと前立腺を擦られている快感に身動ぎしようとも覆い被されているため身体的自由が効かず、快楽を逃がすことが出来ない。
「あ、こ、これ、これ、こんな……っ!? うあ、あ、あああっ、あ! 頭、おかしく、く、ううう……!?」
 体位のせいで小刻みな動きが出来ない分、腰を振る動作は大きくなり最奥に亀頭をぐりぐりと押しつけられる形になる。臀部に肉がぶつかる音が部屋中に響き渡るほどマレウスの動きは激しく、一突きごとにリリアの口からとろけた声が漏れた。
 未だ性器を縛って射精を我慢しているリリアの性器は身体を揺すられるたびにマレウスの腹部で擦れ、痛みさえも感じるほどの刺激に脳みそが回されているような感覚さえしてしまう。
「はっ、ぅ、ううぅう……っ! あ、あ、あ、ひっ、ああああぁぁあああっっ!」
 血流が溜まって真っ赤になった性器に触れられリリアは全身をがくがくと痙攣させる。腹部に力を入れて射精感に堪えれば中が締まったのか、マレウスが小さく喘いだ。
 勝ち負けなど関係なしに今すぐ射精したい、けれどこのままでは癪だ、と本能と理性の間を行き来するリリアの瞳はすでに焦点を失いかけていた。
「あ、ひっ! ふっ、ぅ、あっ、あっ! ああ、こ、こんなに、気持ち、い、いぃ……っ!」
 マレウスの太く長い性器がリリアの奥まで突き立てられ、一気に引き抜かれる。内壁を引き摺られるような感覚の後が抜けきらないうちにもう一度最奥を穿たれた。性器全体で敏感な中を擦られ、リリアは歓喜の声を上げてしまう。全身が性感帯になったかのように快感が身体を巡り、手足が硬直する。
 そのとき、ふとリリアは滲んだ視界でマレウスの表情を見る。はっきりと見えた彼の額を伝う汗に、それが蒸発したかのような官能を奮い起こす匂い。快楽を堪え、それでも堪えきれないとばかりに漏れる低い声。そのどれもがリリアにとって快感への呼び水となった。
 リリア、とマレウスが熱の籠もった息を吐きながら名前を呼ぶ。次の瞬間、性器を縛るために行使していた魔法への集中力が途切れ、塞き止められていた射精感が激流のように込み上げた。
「は、ぁ────!? ああああぁああああっ、あっ、あああぁあんんん──────っっ!?!」
 一際大きく身体を跳ねさせたリリアの性器から精液が飛び散り、中にあるマレウスの性器をぎゅううと締めつける。精液を搾り取るような収縮に彼も結腸に入ってしまう勢いで奥に精液を放った。
「あ、あああ!? で、出て、っ、う、ひ!? あ、ああ、ああああああ──────っっ!!」
 放たれる精液の凄まじさにリリアは絶頂が止まらず四肢の震えが止まらない。さらに中に出された精液が逆流し、ごぽりと空気と混ざり泡立ちながら滴り落ちる。
「あ、は……! あ、あっ、はっ、あ、ふ、あ……! か──はっ、あ──……っ!」
 身体を屈曲しているのと強烈な絶頂にリリアは上手く呼吸が出来ずに乾いた咳が出る。マレウスが肩に乗っていた足をシーツに下ろしてくれても動ける余力はなく、全身が弛緩したままだった。散々好きなようにされて恨み言の一つも呟きたかったが、自分にも非があることを理解しているリリアは結局言葉を飲み込んだ。
 その代わりベッドに横になったマレウスを睨みつける。だが、なにを思ったのか彼はリリアの額にキスを落としてふにゃりと照れたように破顔した。その毒気を抜かれる笑顔にこれが惚れた弱みか、と白旗を上げて降参する。変な体位のせいでぎしぎしと痛む身体や喘ぎすぎて枯れた声、赤く滲んだ内太腿の傷さえも全部マレウスが与えてくれたものと思えば許してしまうから自分でも大概だ。
「愛してる、リリア。僕と出会ってくれてありがとう」
「……まったく、お主はずるいのう……。そんなこと言われたら文句が言えないじゃろうが。……わしも、この世界の誰よりもお主を愛しておる」
 喜ぶマレウスの頭を撫でながら、リリアは思う。やられっぱなしは性に合わないのだ、と。
 17日後のXデーをどうしてやろうかと画策しつつ、リリアはマレウスに噛みつくようなキスをしたのだった。

2022年リリアバースディ記念小説。多分一番描写を頑張った作品だと思います
お正月に何書いてんだ、って感じではあるのですがw
リリアは私が創作を辞めようかというときに出会い、救われたキャラなのでとても思い入れがあります。誕生日おめでとう、リリア!
タイトルはchicca*様から