One and One

楽園の扉

 アルベールがユリウスと恋人になってから気づいたことがある。それは意外と自分は相手に奉仕するのが好きらしい、ということだ。
「んっ、ふっ、んっんっ、ぢゅ、む、ぅ……」
 ソファーに座っているユリウスの足の間で床に膝をつき、彼の性器を舐め上げる。頬を窄ませて柔らかい頬肉で性器全体を包みつつ激しく頭を上下させるといやらしい水音が耳に届く。淫靡な音のせいで頬に熱が集まっていることを自覚しながら、ちらりと上目遣いでユリウスを見つめる。そうすると彼はフッと笑った後アルベールの頭を一撫でし、そのまま指が滑り耳介へと触れた。ぐにぐにと耳を弄られ、びくんと肩が跳ねてしまう。
「んっ! ぢゅっ、ぢゅ……っ! んんっ……は、っ……!」
 些細な愛撫にも感じ入ってしまう自身のはしたなさを恥じながらアルベールは性器への奉仕を続ける。同じ性別だからこそわかる気持ちよさを相手に与えるため、激しさだけではなく時折焦らすように先端から根元までゆっくりとじっくり銜え込む。先端部分へ戻る際には舌全体で竿を舐め、ぼこりと浮き出た血管を一つ一つ確かめていく。亀頭まで戻ってきた唇でキスを落とし、二人の体液で濡れてしまった性器を綺麗にするようにカリ首をぐるりと舐め上げた。 
「はっ……っ、ふっ、」
 ユリウスから零れた熱が籠もった吐息にアルベールは思わず笑みを浮かべる。相手の感じ入った声が好きだ。少しだけ潤んだ瞳や快感を堪えている表情、自分だけが見ることの出来る恋人の姿にアルベールはいつも鼓動が早鐘を打つ。
「んっ、んーっ、ユフ、ひも、ひい……? んんっ、んっ、ふっ、ふっ……」
 ユリウス、気持ち良いか? と言うつもりで放った言葉は性器を咥えているためにたどたどしいものになってしまう。だがユリウスはちゃんと読み取ってくれたらしく微笑みながら答えてくれた。
「ああ、気持ち良い。ありがとう、アルベール」
「ふ、ふっ……んっんっんっ、む、む! ん!」
 ユリウスの快感を含んだ声色に嬉しくなりもっと尽くしたいという欲が沸き起こってくる。頭と口の動きだけではなく根元を支えていた手を少しだけ動かして睾丸に優しく触れた。やわやわと手のひら全体で転がしている途中でユリウスから制止の声がかかる。
「んっ……? ふっ、ぁ……」
 良い子だとばかりに頭を撫でられてから顔を上げられ、性器が口から離れた。先ほどまで夢中で舐めていたというのに目の前ある性器を見つめることがいたたまれなくなり視線を逸らす。そんなアルベールの行動をどう思ったのかは不明だが、ユリウスはくすくす笑いながら軽く太腿を叩いた。
「アルベール、こちらへ」
「あっ……」
 ユリウスの意図を正しく理解出来たアルベールは一瞬で全身が火照ったような感覚を味わう。これからの行為に期待しているのを隠せない身体は微かに震え、時間をかけて立ち上がり相手の太腿に跨がった。直後下半身に伸びてくる手をぎゅっと瞼を閉じることで遮断し、ユリウスの肩に額を押しつけた。彼の指が反応を示している性器をそっと触れ、それから服を脱がされていく。
「あっあっ、ふっ、んん……っ!」
 まだ服を脱がされているだけだというのにアルベールの口からは勝手に嬌声が零れ、背筋にぞわぞわとした感覚が走る。ユリウスの性器と己のそれを擦り合わせようと腰が無意識に動くのを止められず羞恥で涙が滲んだ。それでも求める心はさらに増していき、相手の項に両手を回して身体を密着させる。
「んっんっんっ……! ふ、はっ、あっ、あぁ……っっ!」
 ユリウスが自分に触れているという事実だけで昂ぶり、熱が出口を探して全身を駆け巡っている。腰を、というユリウスの言葉を脳が把握する前に身体が欲望のままに行動し、相手がボトムスを脱がしやすいように腰を浮かせた。アルベールがひたすら喘いでいる間にユリウスは器用にこちらの衣服を剥ぎ、気づいたときにはボトムスは片足に引っかかっているだけの状態で上半身は前だけをはだけさせていた。
 露出した性器がユリウスの屹立したそれと触れ、ぬちょりと淫猥な水音が響く。思わず腰を引こうとしたアルベールを咎めるようにユリウスは互いの性器を手のひらで把握し擦り合わせる。
「ああっ!? んっんっ、はっ……! ひっ、んあ……っっ!」
 強烈な快楽に足が痙攣し、艶やかな声がひっきりなしに零れる。ユリウスは片手で性器を刺激しつつもう片方の手でアルベールの胸板に触れた。
 以前見ていた夢──ユリウスと恋人になるきっかけとなった──を思い出し身を固くしてしまうアルベールを宥めるようにユリウスは胸から腹筋、また胸へとゆっくり手のひらで撫でていく。
「平気かい、アルベール」
「あっ、ぅ……あ、ああ……お前なら、なにをされても……ひっ、んんんっ……!!」
 ユリウスの指の腹がアルベールの乳首を転がす。それだけで乳首は硬度を持ち、身体中に強い快感が走る。だらしなく開いたままの口の端から唾液が零れユリウスの衣服に染みをつくっていくがアルベールはそれに気づく余裕はなく、金槌で殴られたかのような強烈な刺激に思考が支配され始めていた。
「あああぁ……っ、あ、あ、あっ!! んんっ、ふぅ、んっ、は……っ!」
 人差し指と親指で乳首を抓まれ、こりこりとしている突起を弄ばれる。もっと屹立するようにとばかりに先端から乳輪まで捏ねくり回され、時々痛いほどに引っ張られた。性器への愛撫は二人の先走りを手のひらにまぶして滑りが良くなったためか激しさを増しており、込み上げてくる射精感をアルベールはただ堪える。
「はっ、んんっ、ん、ぅ、ああぁ……っ! ユリ、ユリウス……もう、もう……っ!!」
 アルベールは涙で顔をぐしゃぐしゃにしたままユリウスが欲しいと淫らな言葉で懇願した。ここに来るまでに慣らしておいた後孔がひくひくと収縮を繰り返してユリウスを欲しがっている。もう性器だけの刺激では足りないと感じる身体になってしまっているのを認識しながら乳首を愛撫していた彼の手を自らの後孔へ引っ張った。
 アルベール、と欲を含んだ声色で名前を呼ばれ、歓喜に打ち震えた身体は少量の精液を零す。これ以上は零したくないと己で性器の根元を抑えつつ腰を浮かせてユリウスの性器を受け入れる体勢を取った。
「あ、あああぁぁ────っっ!! あっ、んんん……っ! ひっ、ぐぅ……っっ!!」
 ユリウスの性器がアルベールの後孔を埋めていく。火傷したかと錯覚するほどの熱い質量を持ったものが体内に入ってくる苦しさと、それを圧倒的に上回る悦楽。押し広げられた後孔の内壁はすっかりユリウスの性器の形を覚えてしまったらしく精液を搾り取るかのようにぴったりと性器に張りついた。
 脳みそを直接かき混ぜられているかのような快楽にアルベールの目の前は真っ白になる。視界も思考もなにもかも正常に働かず、ただ二人だけが存在しているかのような感覚に一種の恐怖を覚え両手でユリウスにしがみつく。
 だから歪に口角を上げたユリウスの表情をアルベールが見ることはなかった。
「ひっ、ひぃ……っ! はっ、あっ、んんんっっ────!!」
 ユリウスがアルベールの臀部を掴んで腰を細かく上下に動かすたびに悲鳴じみた嬌声が溢れる。だが身体はもっと欲しいと無意識に腰を振り、無我夢中で快感を貪っていた。次々と襲ってくる快楽の波に溺れながらひたすらにユリウスの名前を呼ぶ。
 大切な恋人。好きな人。──けれど、本当にそうだっただろうか。
 アルベールにとってユリウスは大切な親友だったはずだ。好きという感情は恋心に変化するようなものだっただろうか。こんなことを考えるなんておかしい、自分から告白したじゃないかと納得させようとすればするほど頭が痛くなる。だが快感に支配された身体は気持ち良いことしか考えられない。痛みと快楽でアルベールの思考はぐちゃぐちゃに犯されている。
「すき、ユリウス、すきだ……っ! あっんっんっ! うぁ、いいい、いいっ……! もっと、もっと……っ!」
 最奥を穿たれる悦楽をアルベールは欲しがり、それと同時に自分を抱いているのがユリウスだと実感するために名前を呼び続けた。もっともっと激しい快感を、なにも考えなくて済むように。
「────ああ、私も君を愛しているよ。アルベール」
 ユリウスの告白を聞いた瞬間、アルベールは堪えきれずに精を放つ。嬌声は彼の口のなかに消え、舌が口内を蹂躙する。まるで蛇のように二人の舌が絡み貪り合い酸欠と疲労でアルベールは意識が遠くなるのを自覚しながら、ユリウスの精液を受け入れた。
 睡魔に抗えず眠ってしまう直前、アルベールが見たのはまるで血のように真っ赤な唇で笑みを浮かべているユリウスの顔だった。

鳥籠リメイクに二人の行為がなかったのでおまけとして書き下ろしたものでした
以前よりもバッドエンドでクソワロタ。これもユリアルオンリーイベントに合わせての更新でした
タイトルは青葉りんごさんの楽曲「楽園の扉」から。歌詞がとても素敵な曲です