One and One

おあとがよろしいようで

「お帰りなさいませ、マレウス様」
 スカートの裾を指先で摘まみながらリリアはその場で優雅にお辞儀をする。その洗礼された作法は茨の谷での式典でよく見ていたものであり、だが彼が着ている服装は見慣れないものであった。
 高級感のある漆黒の衣装には皺一つなく重厚な印象を与えるがフリルがついた真っ白なカチューシャとエプロンがそれを軽くしている。落ち着きのあるデザインは黒と白のコントラストがよく映えており、ウエストから広がる踝までのロングスカートは大人びているデザインだがワンポイントにあるリボンが上品な可愛らしさを醸し出していた。
 俗世に疎いマレウスとてその服装の名称は知っている。屋敷にいる者が身につけているものと同じで、紛うことなくメイド服と呼ばれるものであった。だがそれをリリアが着ている意味、そしてなぜか自室で待っている意図が分からずに立ち尽くす。
 その間もリリアはいそいそとマレウスの鞄を手に取って貴重品を扱うよう丁寧に机に置いた後、ブレザーに指をかける。脱がせたブレザーを上から下へ軽くブラッシングしている彼に浮かんだ疑問を投げかけた。
「……なにをしているんだ、リリア」
 手入れを終えたブレザーをクローゼットに仕舞っているリリアはマレウスの問いにくるりとスカートを翻しながら答える。
「先日お主のアイスを食べてしまったのでそれのお詫びじゃ。ほれほれ、可愛らしいメイドにご奉仕されて嬉しいじゃろう?」
「可愛らしい……?」
 思わず首を傾げながら呟く。見た目だけならリリアのメイド服姿は可愛らしいと言えるものだが、内面を知っている立場からすれば何を考えているのかわからない不気味さがある。興味本位で手を出せば痛い目を見るのは明らかで、マレウスはリリアから距離を取るようにソファーに座った。彼が次にどんな行動を起こすのか不穏に思いながら見つめていればリリアはふて腐れたように頬を膨らませる。
「むう、わしは美少女と見まごう美貌じゃろうが。それともなんじゃ、露出が足りなかったか? ちっ、お主なら古風の方が受けが良いと思っておったがまさかのむっつりだったとは……」
 ぶつぶつとリリアの口から紡がれる独り言が怪しい方向に進んでいるのを聞き取ったマレウスは慌てて言葉を遮った。彼のメイド服に反応しなかったのは予想外の出来事だったためで、別に露出の問題ではない。確かに肌を隠しているのは勿体ないと思ったがいつもと違って清楚な格好をしているリリアもまたマレウスの好みであるのは間違いないのだ。それどこから少し反応してしまいそうになった自分がいるくらいで、むっつりだと言った彼の的を射ていた言葉に自身の邪な気持ちが気づかれたかと冷や汗をかく。
「も、もう気が済んだだろう? いつもの格好に戻ったらどうだ?」
「……いいや、今日一日はこの格好でいよう。お主もそれを望んでいるはずじゃ」
 リリアはヒールの音を響かせながらこちらへ近づき、焦るマレウスの顎に人差し指をあててにんまりと口角を上げる。
「夜のご奉仕は他の者が寝静まった後で、な」
 耳元で吐息たっぷりに艶やかな声で囁かれ、マレウスの鼓動が早鐘を打つ。どうやら自分のことなどリリアにはお見通しのようで、羞恥に頬を熱くしながらもその言葉を心待ちにしていたかのように首が勝手に縦に動いた。
「ふふ、素直な子は好きじゃぞ。さて、それまで部屋の掃除でもするかのう~」
 離れたリリアはどこからともなくはたきを取り出しぽんぽんと至る所をはたき始めるが、いかんせんマレウスの部屋は物がほとんどない。それに常日頃きちんと整理整頓をしているため──これは身近に反面教師がいるためだ──汚れは少なく、リリアはつまらなそうな表情を浮かべた。
「掃除のしがいがないのう~。もっとこう、レオナの部屋のようにだらしなくても良いのだぞ?」
「……キングスカラーの部屋を知っているのか?」
 リリアのその言葉にマレウスは眉を顰め、言葉に怒気が混ざる。これがセベクやシルバーならば何も思わなかっただろうが、他人の──しかもよりによってキングスカラーの部屋だと聞かされれば黙っていられるはずがない。
 くるくると踊るように目の前をあちこち移動するリリアの手を掴んで腕の中に閉じ込める。彼は一度だけ大きく目を見開き、それから挑発するかのように唇で弧を描いた。
「ふふ、知っておるぞ? あやつの部屋の汚さや匂い、それからどういう風に寝るのかさえも、な」
「────そうか」
 それが想像したようなものではないことはマレウス自身理解しており、おそらくブッチやハウルなどから聞いたのだろうと思う。しかし恋人が他の男の寝相を知っているなどと聞いて嫉妬を覚えないほど枯れてはおらず、ましてやにやにやと見つめてくるリリアの態度に少々怒りを抱いていたのも事実だ。彼の安っぽい挑発に乗るのはあまりにも単純であるが、恋人が求めていることに応えるのも大事なことだろう。
「……まったく、リリアは僕のものだという自覚が足りないな。もう一度、その身体に教え込む必要があるみたいだ」
「おお、そんなに睨まれると怖いではないか。……ふふ、さっそくやる気になりおって……では、わしがお主のものだとわしの身体に教え込んでくれるか?」
 ああ、とマレウスは答えながら指をぱちんと鳴らす。これで周囲一帯に防音魔法がかかり、どんなに声を上げても誰にも気づかれることはない。
 リリアを腕の中から解放したマレウスは少し考えた後、机に手をつくよう指示する。命令に一瞬だけ呆けた彼は、それから大声で笑いつつ立ち上がった。
「かしこまりました、マレウス様」
 これからの行為など感じさせないくらい優美にお辞儀をしたリリアはマレウスの机に左手をつき、右手でスカートを持ち上げ臀部を露わにする。下着はいつものではなく白い肌を強調するようにレースで装飾されている黒色の左右が紐で結ばれているだけのものだった。いとも簡単に解けそうなそれにリリアがこの先の行為を期待していたと知って、マレウスは無意識に唾を飲み込んだ。
「くふふ、興奮したか? ……早く来てくれ、マレウス」
 軽く腰を前後に動かして蕩けたように微笑むリリアに我慢の限界を迎え、マレウスは乱暴に立ち上がり彼を後ろから抱きしめる。反応している性器をぐりぐりと臀部に押しつけると彼は今か今かとばかりに腰をくねらせた。
「ん、む、ちゅ……ふ、んんっ……」
 キスを交わしながらリリアはマレウスのズボンのジッパーをおろし、硬くなった性器を取り出して軽く上下に扱く。それだけで彼の手が濡れそぼってしまうくらいに性器が膨れ上がってしまい、ふふっと笑われた気配がした。悪戯を続けるリリアの手を軽く叩いてから机に押しつけ、彼の下着の紐を解く。ひらりと下着が床に落ちたのを確認してから後孔に指をあてれば、すでにそこはくっぱりと開かれひくひくと収縮した様子を見せていた。
「ふ、ふふっ、ここに来るまでに準備しておったのじゃ。驚いたか?」
「リリアが、自分で……?」
「そうじゃ。マレウスのモノをねじこまれて、ぐちゃぐちゃにしてもらいたくてのう……我慢が出来なくて自分で弄っておった。お主と話しているときも、ずっと、こうしたかった……」
 はあ、とリリアは熱い吐息を零す。艶かしいピンク色をしている後孔を性器に当ててくる彼に理性が焼き切れ、一気に最奥まで貫く。
「あ、あああ!? は、あっ! ああ、ひ、っ、あああ────っっ!!」
 欲しかった快感を与えられリリアが歓喜の声を上げ、背中を弓なりに反らす。精液を搾り取るほどの締めつけに頭がクラクラして思わず射精をしそうになるが唇を噛みしめ堪える。
 びくんびくんと下半身を震わせるリリアの呼吸は途切れ途切れになり、淫靡な水音が滴り落ちる音が継続的に響く。視線を向ければ白濁液が床を汚し、またメイド服も黒い染みが出来ていた。
「あ、ふ……っ、マレウス、少し待ってくれ……わしもうイってしまった」
 はあ、はあ、と肩で息を整えるリリアはマレウスに触れるだけのキスを落とすがそれが余計にこちらを煽っているとは気づいていないのだろう。達したばかりでドロドロにとろけている敏感な内壁に先走りを塗り込むがごとく最奥を穿つ。
「ひっ!? ああああ、あっあっ!? マレ、っ、マレウス、わしイったばかりで……っ! ひぐぅっ、んあ! あっ、あっ、ぐぅうううぅ……っっ!」
 机の淵にしがみつきピストンに堪えるリリアの尻肉がぱんぱんと音を立て、机はがたがたと揺れる。ひっきりなしに嬌声を上げ続ける彼の性器が再びいきり立っているのを確認してからマレウスはエプロンに付いていたリボンを一つ拝借し、リリアの性器の根元を縛り上げた。
「これでもう粗相はしないな」
「あっ、このっ……! ひっ、あっあっあっ……!」
「ふ、そんな口を利ける立場か? 今はメイドだろう?」
「ふぁあぁあ……っ! んんっ、ああ! あ、ひ、ひ、マレウ、ス……様……っ!」
 変態、と小さく呟いたリリアを叱るがごとくマレウスは腰を小刻みに動かし、彼から理性を奪う。半開きになったままのリリアの口からはみっともない喘ぎ声が零れ、四肢は硬直と痙攣を繰り返している。常に達している状態の内壁は脈動し何度も性器を締めつけていて気を抜けば腰から力が抜けそうだった。少しだけペースを落とし、円を描くようにゆっくりとグラインドの動きに切り替える。
「あっ、んく、んっんっ、ああぁ……あっ、んんっっ……!」
 先ほどの一気に絶頂まで上りつめた快感と比べるとじれったいのか、リリアも自ら腰を押しつけるよう身じろぐ。
 ふと二人の視線が交わり、どちらからともなく唇を重ねる。キスの合間に囁くように「好き」と伝えてくるリリアの表情はとても幸福に溢れており、その穏やかな笑顔はセックスしていることを感じさせなかった。けれどマレウスの耳に届く嬌声や淫猥な水音、二人の動きと同様に軋む机にむせかえるほどの様々な体液が混ざり合った匂い。どれもがセックスをしていることを如実に表していて、そのギャップにますます夢中になってしまう。
「はっ、はっ、あぁあぁあ、ううう……うぁっ、い、いいい、いく……っ!」
「……くっ」
 リリアの射精を塞き止めていることも忘れ無我夢中で腰を振り、精子を彼の最奥へ注ぎ込む。それまでぎりぎり理性を保っていた彼は大量の精子を受け、全身を跳ねさせた後、絶頂を迎える。
「っく、うううう……! あ、あああ、ああぁぁああ──────っっ!!!」
 快楽に焦点を飛ばしたリリアは、がくんと糸の切れた人形のように身体を弛緩させた。その拍子に後孔から性器が抜け、その刺激にさえも彼は感じ入った声を上げる。マレウスは床に落ちそうになるリリアを間一髪のところで支え、そこでようやくぎちぎちに締め上げられている性器を思い出した。
「あっは……っ! あは、はっ、ひっ、あ、あ、あ、あ、ああ!」
 痛々しいほどに赤くなってしまった性器に結んだリボンを解けば、リリアはマレウスの腕の中であまりの快楽に痙攣しながら笑い出す。まるでお漏らしをしているかのように彼の性器からは精液が継続的に流れ、後孔からはマレウスの精液が零れていく。その光景は今まで見た痴態の中でも格別で、またしても身体に熱が灯る。自然と呼気は荒くなり、無意識に汗が浮かんでいるリリアのうなじを舐めた。
「ふ、っ、は……! ふ、ふふっ、本当に、お主は……」
 正気を取り戻したリリアはくすくすと笑い、こちらに両手を伸ばす。それをマレウスは受け入れ、抱き上げた彼を机の上に座らせた。
「また粗相をしてしまったわしにお仕置きをしたいのだろう?」
「そんなことは……」
 口では否定するが身体は正直に反応を返しており、リリアの足が勃起している性器をつんつんと突く。それを咎めるように睨んでも彼はどこ吹く風であり、口元に手を当てて心底楽しそうに笑っている。
「若いのだから我慢などしなくて良い、もう一回戦といこうかのう」
「……リリアはもう若くない癖に」
「ふふ、舐めるなよマレウス。わしがこれくらいでへばるような体力だと思っておるのか?」
 焚きつけるようにリリアは己の唇を舐める。それからゆっくりと瞼を閉じる彼に、マレウスは誘われるまま唇を重ねたのだった。

2021年8月に書いたと思われる作品のため今見ると矛盾がありますね。タイトルはchicca*様から