One and One

幸福の行方

 マレウスがこちらに向ける視線に欲が交じっていることはリリアとて薄々感づいていた。けれどマレウスは生まれたときから面倒を見てきた、我が子に等しい存在である。リリアが親と子以上の感情を持つことなど当然あるわけがない。
 そもそもマレウスがリリアに欲を向けるのは幼い頃の境遇をまだ引き摺っているに過ぎない。誰よりも強大な魔力を有しているせいで制御が難しく、癇癪によって引き起こされる魔力の暴走故に長い間マレウスの傍にはリリアしかいなかった。そのために他者との関わりが極端に少なくなり情緒が成長しきれていない部分がある。だからマレウスは親と子の愛情や友情、そして情欲といった全ての欲望をリリアにぶつけているに過ぎない。
 それを間違いだと咎めなかったのはいずれ間違いだと気付くだろうと高を括っていたからだ。ナイトレイブンカレッジへの入学が決まったこともその理由の一つであった。他者との関わりを増やしてマレウスが成長すれば、そうすればきっとリリアに抱く欲も消えるのだろうと簡単に考えてしまった。
 今にして思えばなんて馬鹿げた考えだったのだろう。
 マレウスがリリアに向ける感情はいつか笑い話になるような甘酸っぱい初恋のようなものではなく、どろどろに溶けて混ざり合った愛憎に育っていた。それに気付かず、また、マレウスの好意を知らない振りをし続けたツケをその身で払うことになるだなんて、そのときのリリアは知る由もなかったのだ。

「は、ふっ……!」
 リリアの胸をマレウスの手が撫でる。抵抗しようにも両手はリリアの頭上で茨によって一括りにされており、大きく左右に開かれた足も同じように拘束されていた。さらに間にマレウスがいるために足を閉じることも叶わず羞恥を煽る格好を強要されている。唇を噛みしめなければ声が漏れてしまいそうで拒絶の言葉を吐くことも出来なかった。
 力任せに破かれた上半身の衣服は最早ただの布きれとなっている。新しい制服を用意しなければならない、などとリリアは現状からの逃避としてそんなことを考えていた。それをマレウスは余裕と受け取ったのか、肌を滑る手の動きは激しさを増しついには胸の突起に触れる。芯を帯びてきた突起を優しく、ときには元に戻すかのように押し潰された。抓り、擦られる。
「ぐ、ぅ……! ん、ん、ぐ、ぁ……!」
 痛みと、確かに感じるそれ以外の感覚。リリアは身体を巡る二つの感覚から逃れるためにわざと手に力を込めた。手首に茨が食い込んで赤い線をつくる。ぷっくらと膨らんだ血はそのまま手首を伝い、シーツへと滴り落ちた。
 怒りを込めてマレウスを睨みつける。無意識に魔力を使用してしまったのか、空気が震えたがマレウスはそんなリリアの行動も意に介さず、愛撫を続けていた。
 突起の周囲を撫でたあと屹立しているそれを爪で引っ掻かれる。途端に跳ねたリリアの身体を嘲笑うように、今度は指の腹で優しく転がされた。そうすればリリアは血が滲むほどに唇を噛んで声を上げることを堪えるのだから、マレウスにしてみれば愉悦極まりないだろう。
 マレウスはくつくつと笑ったままリリアの胸に顔を寄せる。それを意味するものがわからないほど初心ではないリリアはそこで漸く制止の声をかけた。これ以上の行為は看過できない。行為の先にあるものは、決してマレウスのためにはならないとリリアは理解しているからだ。こんな行為をされるよりも、もっと早くマレウスの間違いを正すべきだったのだ。
「マレウス、いい加減にやめぬか! こんなこと間違っておると、お主だって気付いているはずじゃ!」
「……リリア」
 行為を中断したマレウスにリリアがほっとしたのもつかの間、彼は口角を歪めて言う。
「嫌なら、本気で抵抗すれば良い。その茨もリリアなら解除出来るはずだ」
 そんなこと出来るはずがない。確かにリリアが本気を出せば解除だけなら可能だ。けれどその力は茨の持ち主であるマレウスに跳ね返り、彼を傷つける結果となる。そのようなことをリリア本人が行えるわけがない。
 二の句が継げないリリアを尻目にマレウスは言葉を続ける。
「僕は本気だ、リリア。だから本気で抵抗しないのなら、僕はこのままリリアを抱く」
「マレウス……ひっ! あっ、やめ……っ!」
 突起にマレウスの吐息がかかる。そのまま突起の周囲をマレウスの舌が舐め、リリアは身じろぎしてなんとか逃れようとした。茨が食い込むのも構わずに両手足首の拘束を引き千切ろうとしたがびくともしない。傷もつけられない茨はそのままマレウスの本気を表わしているようにも思えた。
「たとえこの行為が間違っているとしても、止めるつもりはない。逃げたいのなら茨を解いて僕を傷つければ良い。それを咎めることはしない。……本気だと、言ったはずだ」
 告げられた言葉に、リリアはマレウスの覚悟を思い知った。どんなに言葉で咎めてもマレウスは止めないだろう。それこそ、本気で殺す気で抵抗しなければ。
 マレウスは殺される覚悟を持っている。ならば、その覚悟に立ち向かう覚悟がリリアにはあるのだろうか。
 ないのだろう、とリリアは思う。拒絶することも受け入れることもしなかった結果が今の現状なのだから。見ない振りをして誤魔化してきた罪。マレウスに甘えていた罰が、リリアに重くのしかかる。
「あっ、いや……っ、いやじゃ、マレウス……っ! ふ、ぁっ!」
 マレウスは屹立した突起を下から上へ舌でなぞる。器用に舌先を使って先端を穿り、ぐりぐりと押し潰す。
 背を反らせたリリアはいやいやと頭を振る。滲んでいた涙がこぼれ落ちてシーツを濡らした。こんなことは嘘だと思いたかった。けれど駆け巡る快感が紛れもない現実だと知らしめてくる。
 リリアにはマレウスを受け入れる勇気も、拒絶する覚悟も選べない。それが一番マレウスを傷つけているのだと理解していながら、だ。どちらか一方に決めるということは、残された方を切り捨てるということ。どちらを選んでも二人の関係は大きく変わるのだろう。それがリリアにはなによりも怖い。
 だからリリアは泣いて許しを乞い、快楽に喘ぐしかなかった。
「ふぁあ! あくっ、んっ、んふぅっ……! い、や、だ……っ! いや……っ!」
 舌が乳輪をくるくるとなぞる。唾液で濡れた突起に吐息がかかるたびにぞわぞわとした感覚がリリアを襲う。もう片方の突起はマレウスが散々指で弄んだためじんじんとした痛みを訴えていた。赤子が乳を吸うように突起を口に含んだマレウスは、けれど赤子とは違う強さでじゅっと音を立てながら吸う。
「ふぁああっ! やっ、あっ、あ……! やめ、それ、やぁ……っ!」
 それから突起の輪郭を確かめるかのように舌が動き、離れたと思えば甘く噛まれる。その間も指での愛撫は止まずリリアは悲鳴のような嬌声を上げ続けた。引っ張った突起を親指と人差し指でこねくり回され、強すぎる快感にぼろぼろと涙を流す。
「んっ、あっ! や、ぁ、マレウス、お願いじゃから、もう……ふ、ぁ!」
 リリアの懇願をマレウスは鼻で笑い、服の上からも一目でわかるほど反応している性器に触れた。
「マレウス、もうお願い、じゃから……許して……、たのむ……」
 これ以上先に進んでしまったらリリアがマレウスに抱いていた感情を砕かれてしまう。
 懐かしい、二人だけだったときの愛しい過去。それらを投げ捨ててまでマレウスは関係を変えようとしている。けれどもリリアにはそれらを捨てることなんて不可能だ。交わらない二人の平行線に、リリアはさめざめと泣いた。
 だから、マレウスが同じように表情を歪めていたことにも気がつかなかった。
 小さくなにかを呟いたマレウスの声はリリアの聴覚を以てしても聞こえず、また、訊ねる余裕もなかった。
 ぱちん、とマレウスが指を鳴らせば足の茨が消失し、リリアの下半身は自由になる。しかしそれは行為を止めるためではなく続けるために解除されたに過ぎない。ファスナーに手をかけたマレウスをリリアは絶望の眼差しで見ていた。
 ゆっくりと下半身の服が脱がされていく。脱力しきった足では抵抗することも叶わず、遂にマレウスの手が下着へと伸びたときは羞恥で死んでしまいそうだった。下着が先走りで濃い染みをつくっているのがはっきりと見て取れたからだ。
 子のように思っていた相手に犯されそうになり、拒絶をしていても感じてしまっている。その事実にリリアは頭がどうにかなってしまいそうだ。いっそ気を失えられれば幸せだったのかもしれないが、それも結局のところ問題の先延ばしでしかない。
 裸になったリリアをマレウスは見つめている。視線の強さにそっと顔を背けると、右足を抱えられ足先に唇を落とされた。震えたリリアを無視し、マレウスのキスは段々と足の付け根へと上がってくる。
「あっ、は……っ、ふ、っ、んっ……はぁ、っ!」
 内太股をきつく吸い、印をつけられる。一つ二つではない数のそれに性器の先端から滴が零れた。それを指で掬われ、リリアは海老反りになって淫らな悲鳴を上げる。
「あっ、ああぁっ! ひっ、くぅ……っ! だめ、だ、だめ……っ!」
 身体が意思と全く異なる反応を示してしまう。嫌だと思っているのに与えられる快感を強請るように無意識に身体が動く。濡れそぼった性器は触られて直立し、蜜を溢れさせた。
 抱えていた足を戻し、マレウスはリリアの性器を上下に扱く。上から下へ、滴を満遍なく塗り込むような動作にリリアの足はシーツを蹴った。
「ひぁっ、あっ、あっ、あっ……!」
 裏筋を指でなぞったあとにカリ首の周りをぐるり円を描くように刺激され、堪えきれずに少量の精液を出してしまう。
「マレウス、も、もう、んっ! あっ! も、いっちゃ……っ、ふぁっ!」
「リリア……」
 耳を囓られ、同時に性器の先端に爪を立てられる。その瞬間、リリアはマレウスの手の中に精を放っていた。
「あああ、あ、ひ、あ……っ! ぅ、ふ、は、ぁ……っ! は、ん、ぅ……っ!」
 性器が精液を出し切ろうと脈打ち、腰回りにぞくぞくとした感覚が走る。荒い呼吸は収まる気配を見せず、リリアはこのまま死んでしまうのかと思ってしまった。
 ぐったりとしているリリアを尻目に、マレウスは手に出された精液を自らの口元に運んで舐め始める。呆然とマレウスの行動を見ていたリリアはその光景にぎょっとした。
「そんなもの舐めるでない!」
「……美味しくはない」
「当たり前じゃ!」
「リリアのだから美味しいかと思った」
「いや、美味しかったらそれ病気じゃろ」
 そうかと落ち込むマレウスは先ほどの様子とは大違いだ。今なら間に合うかもしれないとリリアは諭すように声をかける。
「マレウス、ここまでじゃ。マレウスの気持ちはわかった。けれど、わしはお主とは今までの関係でいたい」
「リリア……」
「お主のことは愛しておる。だが、それはお主が求める感情ではないとわかったはずじゃ。だから、」
「だから、また見て見ぬ振りをする、と。そう言いたいのか、リリアは」
「……それは」
「リリアはなにもわかっていない。今更、ここまでしておいて元の関係に戻れるとでも? 僕には出来ない。戻るつもりがあるなら、こんなことはしなかった」
 マレウスは茨の拘束を解き、リリアの手を取った。手の甲に唇が触れる。
「この行為を謝るつもりはない。謝ったらリリアは許してしまうだろう? 許さなくて良い、殺されても構わない。ただ、もう僕の気持ちを見ないふりをすることだけはやめてくれ。どんな答えでも、僕は受け入れると決めた」

 ――愛している、とマレウスはリリアに告げた。

 なんという重さの言葉なのだろう。そう、リリアは思った。
 愛という言葉自体は同じなのに、二人の間ではその重さが違う。そこに込められた感情や欲も、なにもかもが異なる。
 まだ元に戻れると考えていた浅はかさはその言葉の響きで打ち砕かれる。そして、またマレウスの気持ちを蔑ろにしてしまった自分を恥じた。
 きっと、この行動を起こす前にマレウスは何日も悩んだのだろう。こんなこと誰にも相談できなかったに違いない。そこまで追い詰めたのは紛れもなくリリア自身だ。
 そして、二人の関係を壊すことになってもマレウスはこの結果を決断した。
 マレウスが選んだ方法は間違っていると断言することは容易い。もっとより良い方法があったはずなのだ。けれど、マレウスを咎めることを今のリリアには出来そうもない。
 嗚呼、とリリアはか細く息を零す。
 マレウスの覚悟を知って、想いの深さを知ってしまって、リリアはもう彼を拒絶することは出来なかった。それほど己を愛してくれるのなら、己もマレウスを愛したいと思ってしまうのは同情か、それとも別の感情か。
 リリアにわかるのは、マレウスの想いに喜びを感じている自分が確かに存在しているということだけだ。
 手を掴んでいるマレウスにそっと指を絡める。はっとしたように息を飲んだマレウスに、リリアは小さく微笑んだ。
 リリアの手に収まっていた小さな手は、いつの間にかリリアの手よりも大きくなっている。もう子どもではない。ここにいるのは、親と子の関係に終止符を打つことを決めた一人の男なのだと実感させられる。
 だから、リリアも決断する。マレウスを、ただ一人の男として受け入れることを。
 絡めた手をリリアは自分の口元に引き寄せ、先ほどマレウスがしたように相手の手の甲へキスをした。
「今まで、気づかないふりをしてすまなかった。まだお主の気持ちと一緒かどうかはわからぬが……それでも、お主に、愛されたいと思ってしまった。お主を、一人の男として愛したいと思った」
「リリア……」
 どちらともなく瞳を閉じ、そして唇を重ねた。触れるだけのキスで心が満たされることがあるのだとリリアは初めて知る。
 両手をマレウスの首の後ろに回して舌を絡ませる。飲み込めない唾液が顎を伝い滴り落ちるのも気にせず、二人は夢中で口づけを交わす。その最中にマレウスの片手がリリアの後孔へ触れたため身体が固まるが彼を受け入れるために力を抜く。
「ひっ、う、ぐ、ぅ……」
 入り口周辺を揉みほぐし、ゆっくりまずは一本だけマレウスの指がリリアの体内へ入ってくる。異物を押し返そうと勝手に力が入り中々進めない。そこでマレウスはリリアが出した精液を使い、潤滑油の代わりにする。自分の出したものをまた体内に入れられるのは複雑なものがあったが楽になるのならなんでも良かった。
 マレウスは摩擦を減らすように後孔の浅瀬と内壁に精液を塗り込む。リリアは呻き声を上げるほどに辛いが、それは相手も同じだった。上手く力を抜けないためマレウスの指を食い千切りそうなほどきつく締め上げてしまう。意識すれば意識するほどどうすれば良いのかわからなくなり、リリアの瞳に涙が滲む。
 それでも二人とも根気よく続け、漸く二本の指が入るほどに解された頃には息も絶え絶えになっていた。二本の指を揃えてくの字に折り曲げたまま内壁を擦られると痛みだけではなく快感がリリアを襲う。
 強すぎるのは痛いから程よい強さが良い、と自分がどうやって感じたのかをマレウスに伝えながら、リリアは自らの弱いところを彼の指を使って探し出す。使うことはないだろうと思っていた知識を記憶から引っ張り出しながら、リリアも積極的に動いた。
「ん、んんぁ……っ、あっ、ああっ!」
 そしてマレウスの指は前立腺を見つけ出し、そこを擦られたリリアは背を弓なりに反らす。マレウスに知識があったかは定かではないが、リリアの感じ方が違うとわかったのだろう。重点的にこりこりとした場所を押し始めた。
「あっ、ひゃぁ、あ! そこ、いい……っ! んっ、んっ、ふぁっ!」
「リリア、気持ちが良いのか?」
「ふ、あぅ、い、いい……そこ、もっとして……っ!」
 リリアの性器は再び首を擡げる。マレウスは前立腺に狙いを定めて抜き差しを繰り返し、中が解れたところで指を三本に増やした。バラバラに動く指に翻弄され喜悦の声を上げていたリリアは、そこでふとマレウスの下半身に視線をやった。マレウスの性器は衣服の上からでも目立つほどに屹立しており、思わず唾を飲み込んだ。
 視線に気づいたのであろうマレウスが動きを中断し、やめるかどうかを問う。ここでやめたらマレウスが一番辛いだろうに、それでもリリアを気遣う彼に首を横に振った。
「平気じゃ……多分、おそらく……」
「……きっとリリアが痛がってもとめられない。それでも、続けるか?」
「ああ。痛がったり泣いても、そのまま続けて欲しい。というか散々わしを泣かせておいて今更じゃぞ?」
 そうだな、と少し困ったように笑いながらマレウスはリリアの体内から指を抜いた。ファスナーに手をかけ下着をずらし、屹立した性器をリリアの後孔に宛てる。時間をかけて侵入するそれは指とは比べものにならない質量があり、リリアは体内を火かき棒で掻き混ぜられているかのような痛みに呼吸を忘れた。頭の天辺から足の爪先まで、ピンと張った一本の線になったかのように身体が硬直する。
「ぐ、は、ぐぅ……っ!」
 痛いという言葉では足りず、最早この行為が拷問に近い。それでもリリア泣き言は口にはせずにマレウスを受け入れようと必死に息を吐き続けた。マレウスも性器を締めつけられ苦しいだろうに、呻いただけでなにも言わなかった。シーツを握るリリアの手をマレウスは己の背中に回し、萎えてしまった性器を扱いてくれる。
「ふ、うっ、はぁ、ぁ……ひ、ぅ」
 性器を触られて少しだけ楽になったリリアは息をする度に体内にマレウスの性器を感じた。今、リリアはマレウスに抱かれているのだと、強く実感させられる。マレウスの性器は熱くて、交わったところからどろどろに溶けてしまいそうだった。
「ぁ、は……ん、んっ……」
 リリアの声色に艶があるのに気づいたマレウスは収縮が緩まるその隙を狙い、一気に根元まで押し込んだ。リリアはその衝撃にマレウスの背に爪を立てる。血が出たかもしれないがそんなことを気にしている余裕はなかった。
 全部入ったと呟いたマレウスの額から汗が流れる。それがひどく扇情的に見え、リリアは胸が締めつけられる。心と身体が連動したのか、マレウスの性器を無意識に締めつけてしまい二人で小さく呻いた。
 苦しくて、痛い。それがリリアがマレウスを受け入れたときの感想だ。それなのに、もっと先を求めてしまう。動いて欲しい、気持ち良くなりたい。そして、マレウスを気持ち良くしたい。
 だからリリアは自ら動いて欲しいとマレウスに告げる。マレウスはリリアの負担を心配し一度は断ったが、最後には首を縦に振った。
「う、あ……! ひ、ぐう、あ、あ、あ!」
 指では届かなかった、足りなかった内壁を性器で擦られる。動きは亀の歩みのごとくゆっくりとしたもので、それが逆にリリアを焦らし昂ぶらせていく。浅瀬まで抜かれ、奥まで入れられる。その運動を繰り返しているだけなのにリリアの身体は次第に快楽を掴み始める。
「あっ、ああ……っ! あ、んっ、んん、ふぁっ!」
 リリアの体内はすっかりマレウスを受け入れており、動きが速くなってもそこに痛みはなかった。足をマレウスの腰に巻き付け、もっと、と強請る。リリアの淫猥な様子にマレウスも手加減をやめ、ごりごりと前立腺を穿つ。
「う、あ、ひ、あ、あああ! ふあ、あっ! そ、それ……く、ふ、ああ!」
 すっかり快楽の虜になってしまったリリアはだらしなく口を開け、ただ喘ぐ。唾液が口の端から流れているのも気づかないまま、マレウスにしがみついた。
「ひ、ひっ……! や、これ、こわ、壊れ、ちゃ……! あ、ああ、マレウス、好き……っ! おく、奥、奥まで、とどいて……っ!」
 ぎゅううとリリアはマレウスの性器を締めつけた。すでに限界が近いが、それはマレウスも同様だったらしく呼吸が荒い。
「あっあっあっ……! また、い、いっひゃ! あは、あ、ふあぁっ!」
「リリア、もう……っ!」
 マレウスは最後にもう一度奥を穿ち、リリアの最奥へ熱を放った。
「────っっ!! んはぁっ、あ、あっ…………はぁー……ぁ……」
 マレウスの熱を受けてリリアも射精し、そのまま全身から力が抜ける。マレウスの性器が抜かれれば塞いでいたものがなくなったため後孔から精液が零れた。それに頬を赤く染め、リリアは顔を両手で覆った。熱に浮かされていたとはいえ、色々と恥ずかしいことを口走った気がする。
 そんなリリアを見てマレウスは穏やかに笑い、抱きしめた。
「リリア」
「うっ、今はわしに構わないでくれぬか……は、恥ずかしい……」
「それは出来ない。後処理もしないといけない」
「後処理!? い、いやいやマレウスそこまでお主にしてもらうわけにはいかぬ! そうじゃろ!?」
 後処理という不穏な言葉にリリアは思わずマレウスを見た。その結果、断られてしょんぼりしているマレウスを見ることになり、言葉に詰まった。マレウスの瞳はダメなのか、と無言で訴えてくる。う、あ……と言葉にならない音を発し、リリアは「頼む」と白旗を上げた。
 その言葉を聞いたマレウスはにやりと笑い、嵌められたと悟ったリリアは苦虫を噛みつぶした表情をする。けれど、そんなことも許してしまう自分にリリアは気付いた。
 これから先、どうなるかはわからない。この関係が続くなんて保証はどこにもない。もしかしたらマレウスがこうなったことを悔やむかもしれない。
 それでも、リリアは決断したこの結果を後悔することはないと断言できる。幸せそうに微笑むマレウスが、リリアが求めているものなのだから。
 マレウスの幸せこそが、リリア・ヴァンルージュの一番の幸福なのだから。

多分2020年か2021年に書いたと思われる作品。いやぁ、今見ると…色々と…
シチュエーションは私の性癖を詰め込んでますね。茨の拘束はこの後同人誌の作品に受け継がれていきます