「今夜、私の部屋に来ないか」
その言葉は書類に目を通しながらしていた雑談が途切れた刹那、ユリウスが静かに零したものだった。部屋には彼と己しか存在しないというのに、投げかけられた言葉が自分へのものだと気づくのにアルベー
ルはほんの数十秒ほど時間を費やしてしまった。
なぜならユリウスの声色にはアルベールだけがわかる情欲が混ざっていたからだ。
けれど、とアルベールは心の中で疑問を浮かべる。今までしてきた雑談に果たしてそういった恋人の情が湧き起こるような会話はあっただろうか。雑談といっても大半はこの土地の土壌が、あの地方は晴れの天候が少ないから作物がなどという仕事に関わるものだったというのに。窓から差し込む太陽の温かみはそういった感情と真逆なものだとアルベールは感じさえもするのに、どうしてこのタイミングでユリウスは口にしたのだろう。
整理したばかりの書類を持ったまま黙り込んでしまったアルベールにユリウスは数冊の本を抱えながら近づいてくる。カツン、カツンと硬い床に響く足音はまるで己を咎めているかのように思えて落ち着かない気持ちになり、アルベールはあちこちへ視線を彷徨わせ、それから俯く。
「それで、どうするんだい?」と返答を促すユリウスはアルベールがいる机の前に立ち、指先で天板に触れた。長く角張った指とグローブをしていてもはっきりと浮かび上がる男らしい骨格の手が急に視界に入ってきたことに動揺し、思わず肩が震える。
「え、あ、そう、だな……。迷惑じゃない、か?」
「私から誘っているんだ、迷惑なわけがないだろう?」
「そう、そうだよな……」
おそるおそる顔を上げ、ポーカーフェイスが上手い親友の顔を見つめた。そこにはいつもと変わらないユリウスの表情がある。先ほどの情欲を含んだ誘いは幻だったのだろうかとアルベールが思ってしまうほどにいつも通りだ。
対して己はどうだろか、と微かに熱を灯している頬に羞恥を覚えたアルベールはユリウスから逃れるように視線を逸らした。
きっとユリウスはなにか仕事で相談があったのだろう。自室でないと話せないような大事な話だというのに、そういった誘いだと思うなんて不誠実で、はしたない。
欲求不満、なのだろうかとアルベールに不安が過ぎる。恋人同士でも未だに清い関係を続けてきた反動だろうか、キスまでは何度かしているのだが。
──触れて欲しい、と願ってしまうなんて。
「……アルベール」
不意にユリウスは己の名前を呼んだ。なんだ、と返事をするよりも早く彼はそっとアルベールの耳元に唇を寄せてきた。予想外の出来事に思考が止まり、全身が硬直する。呼吸を忘れたかのように身動ぎできないアルベールの頬をユリウスの柔らかく、それでいて癖っ毛の髪が撫でた。は、と漏らした吐息は自分でも信じられないくらいに欲望が見え隠れしており、相手は見透かしたようにフッと鼻で笑う。
「では、また後で」
なにごともなかったかのように身を離したユリウスは、最後にアルベールの手の輪郭を確かめるように指先でなぞった。そのせいで手に力が入り書類がぐしゃりと折れ曲がる。その音でアルベールが我に返った頃には、ユリウスはもう部屋から出て扉を閉めていた。
「………………」
握った箇所がよれよれになった書類で真っ赤に染まった顔を隠しながら、アルベールは盛大にため息を吐く。気のせいではなかったという羞恥心と今夜への期待。不安や迷い、様々な感情が頭の中をかき回す。
だが、思考を占めるのはユリウスが触れたとき、彼の指が微かに震えて一瞬だけ躊躇うような態度を見せたことだ。恋人としての触れ合いに緊張したからなどという理由ではないことはアルベールにもわかる。悔しいがそういったことへのリードは常に彼が握っているのだから。
ならば、どうして。そして、やはり誘いのタイミングがあまりにも突発的すぎることも疑問を膨らませるのに充分すぎる要因だ。
自分たちが恋人でありながら清い関係なのは単に復興のため忙しいからではない。ユリウスが己は幸せになるべきではないと自責の念を抱いていて、アルベールが望んでも先に進もうとしなかったからだ。
王を殺した重罪人だと表立ってユリウスを糾弾する者はいない。それどころかどうしてそんなことをしたのか一部始終を聞いていたマイムたち三姉妹や事情を知らない騎士団の仲間たちに慕われる毎日だ。そのことに罪悪感を覚えていることにアルベールは薄々気づいている。陰口を聞いてどこか安堵しているような表情を見せたことだってあった。そんな自虐性を持ったユリウスがなんの理由もなくアルベールに触れようとするわけがない。だって彼はいつだって断罪を望んでいたのだから。
きっとなにかがあったはずだ。ユリウスの思考を変える大きな出来事が。それは決して良いものだけではない──どちらかといえば、悪いものの確立の方が高い。
ままならないものだ、とアルベールは思う。ただ好きという気持ちのまま行動できたらどれほど単純に事が済んだだろうか。しかし、あの一件がなければ自分たちは決して恋人にならかっただろうということも理解している。心の澱みを隠したままに親友と呼び合い、生きていったのだろう。どちらの方が健全なのか、アルベールは即答できなかった。
もしかしたら、ユリウスは恋人という関係を止めて親友に戻りたいのかもしれない。それならば彼の様子がおかしいことにも一応納得がいく。単に己が意識しすぎで恋人の誘いに見えただけで、本当はユリウスは逆のことを考えていたのかもしれない。
一度落ち着くため、アルベールはゆっくりと深く息を吐いた。
もしも、本当にユリウスが関係を解消したいというのならば己はどうするべきなのだろう。今更恋心をなくすことなど不可能で、けれども一度彼をあそこまで追い詰めた張本人が否と言えるわけもない。
思考がどんどん悪い方の深みにはまっていっているのを振り払うようにアルベールは頭を振った。今考えても仕方のないことに時間を使う余裕などない。アルベールが現状考えないといけないことはくしゃくしゃになった書類をどうやって元に戻すかの方法だ。指先で折り目を伸ばしてみるがまさに焼け石に水のような意味のない行為で、せっかくマイムが作成してくれた書類をだめにしてしまったことにアルベールは色々な感情を込めて深いため息を吐いたのだった。
夜も更け、すっかり静まりかえった城内をアルベールは一人歩いていた。いつも携えている天雷剣は今夜だけは自室に置いているため少しだけ落ち着かない気持ちになる。
本来であれば肌身離さず携帯するのが正しいのだろうが、昼間アルベールが考えていたことを思い出すと全ての切っ掛けとなった天雷剣を持っていくのが怖くなったのだ。
己が天雷剣を持っていることをユリウスはどう思っているのか、今更ながらアルベールは深く考える。己がいなければきっと天雷剣の持ち主は彼だっただろう。そう思えば、アルベールはユリウスから様々なものを奪っていたのかもしれない。
自己嫌悪が進んでいくアルベールの思考とは裏腹に歩いていた足はユリウスの部屋の前で動きを止める。そのまま扉をノックすれば良いものの、身体は一向に動く気配を見せなかった。柄にもなく緊張しているのだと理解してしまう。もしも本当に別れ話だったらどうすればいい。また、誘われた理由が別れ話ではなく恋人の営みのためだったとしてもやはりどうすればいいのかアルベールには検討もつかなかった。
ええい、ままよ! とアルベールは些か乱暴に扉を叩く。すぐに下りてきた許可を聞き、覚悟を決めてユリウスの部屋に踏み入れた。
ユリウスは一人用のソファーに腰掛けており、彼が座っているのと同じものが向かい合うように置いてある。中央にはガラスのテーブルがあって中身の入っていないワイングラス二つと特産品である葡萄酒があるのが見えた。
「随分と遅かったようだね、迷子にでもなっていたかい?」
「からかうのはよせ。……少し、考えることがあって」
アルベールがソファーに腰を下ろせばユリウスはグラスに葡萄酒を注ぎ込む。持たされたグラスがカツン、と彼のものと触れ合う音を響かせたのを合図に宝玉の如く赤色に輝いている液体を口に含んだ。
すっかり飲み慣れた葡萄酒は気分を落ち着かせる。そのおかげか余裕が生まれたアルベールは行儀の悪さを無視し、ワイングラスをゆっくりと回しながらユリウスの意図を見極めるためじっと見つめた。
アルベールの視線に気づいている──真正面にいるのだから当然なのだが──ユリウスは穏やかな笑みを浮かべたまま葡萄酒を飲み続けている。ゆらゆらと揺れる液体は光を反射して彩度が変化しているようにも見え、その赤色は彼が身に纏う瀟洒で上品な礼服のようでとても美しいと思った。ワインが食道を通過するたびに隆起した喉仏が上下に動き、妖艶さを漂わせており、色香を匂わせている。恋人としての態度を見せるユリウスにアルベールは頬に熱が集まっていくのがわかった。
先ほどまで考えていたことなど頭の片隅に追いやられ、アルベールの口から無意識に「好きだ」という想いが零れた。放たれた言葉に驚いたのは己だけではなくユリウスも同様で、彼は目を数度瞬いてから口角を上げる。それからゆっくりと近づいてくる顔にアルベールは大げさに肩を跳ねさせつつ拒絶はせずに瞳を閉じた。
「ん……、ふ、ぅ…………っ」
「アルベール……」
触れるだけの口づけ。だが、唇が重なる瞬間にユリウスが迷ったような気配がしたのにアルベールは気づいた。
どうして、と思うがキスを続けるうちに葡萄酒の匂いとしっとりとしている唇の感触に酔わされたのか、頭がふわふわとして全身の力が抜けていく。ワイングラスを落としそうになるがユリウスの指が絡んでグラスを奪われた。
キスの終わりにはぺろりと下唇を舌で舐められ、背筋にぞわぞわとした感覚が走る。滲んだ涙のせいで視界は朧気だが、ワイングラスが二つテーブルに置かれているのが見えた。目の前にいるユリウスもアルベール同様に呼気が荒く、頬は紅潮している。その中で違和感を覚えたのは彼の表情だ。ほんの微かに、けれど確実にどこか悲しそうに歪んでいる面持ちをアルベールは看過することはできなかった。
ユリウスの腕を掴み、ソファーから身を乗り出してアルベールは口を開く。
「ユリウス、なにがあった?」
「……いきなりなにを言い出したかと思えば。そんなことを言う君の方こそなにかあったのかい?」
「聞いているのはこちらだ、話を逸らすな。俺が気づかないとでも思ったか? 今回だけならまだしも、昼間に躊躇ったのは失敗だったな。緊張していた、なんて言い訳は聞かない。それこそ今更な話だからな」
「………………」
「ユリウス……」
アルベールの追求を黙って受け止めるユリウスに胸が痛んだ。話を逸らすことや黙っているということはおそらく話せない、話したくないことなのだろう。アルベールは掴んでいた腕を離し、俯きながら頭に過ぎっていた最悪の考えを言葉にする。
「……触れるのに戸惑うのは、別れたいからか……?」
「それは違う」
離れた手を再び繋いだのは、毅然とした声で異を唱えたユリウスだった。するりと伸びた指が離さないとばかりにアルベールの手をきつく握りしめる。
「君に不信を抱かせる行動を取っていた私が言うことではないかもしれないが、別れたいなどと思ったことは一度もない。信じて欲しい」
「──ああ、信じる。俺は、お前を信じている」
ユリウスの真摯な眼差しに考えるよりも早く言葉が紡がれる。それは紛れもなく己の本心であり、口にしたことでアルベールの胸に蔓延っていた不安が消え去っていくのがわかった。
そうだ、とアルベールは昔を思い出す。罪の意識に苛まれ自身を省みず身を粉にして祖国に償いをしていたユリウスが、泣きそうな顔で「再びレヴィオンを裏切ることになっても、君への想いを捨てることができない」と己を抱きしめた日に、アルベールもまた決意したのだ。なにがあっても彼を信じると。
レヴィオンや騎士団の仲間、なによりもユリウスのことを思うのであれば告白は拒否するべきだった。二人でいるだけで良い顔をしない者が少なからずいるというのに、万が一恋仲だと知られればどんなことになるかは想像に難くない。そんなことをユリウスが考えつかないはずがないのに、それでも彼はアルベールのことを好きだと言ったのだ。あの一件から唯一ユリウスが自らの意思で求めたもの、それが己だった。だからアルベールも同じものを背負いたいと考え、彼を受け入れた。
同じ過ちは繰り返さないと誓ったはずなのに、どうして忘れていたのだろうか。己の情けなさと別れるつもりはないと言われたことへの安堵にアルベールの瞳に薄く涙が滲む。それに気づいたユリウスが驚いたように目を見開いたのを見て慌てて弁明をする。
「す、すまない。お前が生半可な気持ちで俺を選ぶわけがないとわかっていたはずなのに、勝手に不安を感じてお前の気持ちを一瞬でも疑った自分が情けなくて……」
「いや、私も悪かった。……君に隠しごとをしていたのは本当だ。ただ、それを伝える勇気がなかった。それなのに、どうしても君に触れたい気持ちが止められなかった……」
アルベールの目尻に浮かんでいる涙をユリウスの指先が拭う。テーブルを挟んでの距離さえももどかしく思うのはお互い様だったのか、ユリウスの「こちらへ」という言葉に従ってアルベールは立ち上がり彼のソファーの前に移動した。片膝をソファーに座ったままの相手の足の間に入れ、体重をかけないようにユリウスに寄り添う。ふわふわとした髪の一房を指で掬い、唇で触れた。擽ったそうに笑うユリウスはアルベールの腰に手を回し、ぎゅっと引き寄せる。胸元に顔を埋めた彼はぽつりと静かな声で問う。
「一つだけ、質問に答えて欲しい」
「ああ」
「もしも……もしも、私がこの国を去ると言ったら君はついてきてくれるか?」
「──────」
予想もしていなかった言葉にアルベールは言葉を失った。ユリウスがレヴィオンから去るなど、普段の彼を見ていれば考えつかないことだったからだ。もしかしたら二人を良く思っていない者から理不尽な扱いを受けていたのだろうか。
「………………」
違う、とアルベールは小さく頭を振る。今考えるのはどうしてユリウスが質問を投げかけたか、ということではなく、己がどうしたいか、だ。
全てを捨ててユリウスと共に生きる道、彼と別の道を行く未来。どうしたいのか、どうすれば良いのか。その答えはもう、とっくの昔に決まっていた。
「俺は、行かない。俺がこの国を去ってしまったらお前が愛したレヴィオンを誰が守ると言うんだ?」
「アルベール……」
ユリウスの両頬に手を添え、顔を上げさせる。交わった視線にアルベールは微笑み、告げた。
「お前が自らの意思でこの国を去るのなら、俺は止めることはできない。それがこの国のためになると考えての行動だろう? なら、俺がどんなことを言っても止まるようなお前じゃないだろう」
次の言葉を話す前に一呼吸置いたアルベールの視界に映るユリウスは優しげな笑みを浮かべていた。
「だからお前が自らの意思で俺たちのことを思って去るのなら、俺にできることはお前が帰ってくる場所を守ることだ。一度去ってしまったお前が戻ってきてくれたように、また去ったとしてもユリウスは必ずここへ戻ってくる。だってここは、レヴィオンは、お前が愛した国だから」
「……違うさ、レヴィオンだけじゃない。アルベール、君の隣こそが私の帰ってくる場所だ」
「ふっ、そうだな」
くすりと笑いながらユリウスの額に口づけを落とす。背中を撫でる彼の手はもう戸惑いの色が見えず、きっと望む答えを告げることができたのだろう。問題はユリウスがこの国を去るかもしれないということだが、その理由はおそらくこの場で語ってくれるはずだ。
昼間からのもやもやに一段落がついて安堵したアルベールはユリウスの肩口に顔を埋めた。気が抜けた瞬間、先ほどの「君の隣が帰ってくる場所だ」という愛の告白──アルベールはそう聞こえた──が今更ながらじわりと羞恥心を呼び起こす。顔に熱が集まり、それを隠すようにぐりぐりと額を押しつけた。
「……私は今でも星晶獣に寄生されている」
「!!」
零された言葉は衝撃的なもので、アルベールは弾かれたように顔を上げてユリウスを見る。彼はなにもないかのような表情をしているがそれが取り繕われたものだと一目でわかるほど不器用なものだった。
「どうして……どうして! 団長が、ルリアがお前を人に戻したはずだろう!」
「確かに、ルリアが私の中にいた星晶獣を取り除いてくれて私は人の姿に戻れた。だが、彼女が察知できない部分に潜んでいたのか、どうやらまだ私の中にいるみたいだ」
「そんな……」
「……私がそれに気づいたのはつい最近だ。悪意を向けられたとき、抑えきれない衝動が私を襲った。以前、王を殺したときに感じたものと同じものだとすぐわかったよ。……忘れられるわけがない」
「ユリウス……」
くしゃりと顔を歪めたユリウスの瞳には涙は浮かんではいない。けれどアルベールには彼が泣いているように思え、壊れ物に触れるかのように両頬に手を伸ばした。頬を撫でながらソファーから降り、床に両膝で立つ。ユリウスは頬に触れているアルベールの手の甲に手を重ね、一度ゆっくりと瞳を閉じる。
「このまま、なにも言わずに去ることも考えた。そうするべきだと思った。だが、私は……、アルベール、君の傍にいたかった。君に触れたいと思った」
瞼を開けたユリウスの瞳から一筋の涙が零れる。初めて見た彼の涙にアルベールは痛いほどに胸がしめつけられ、たまらずにユリウスを抱き寄せた。
どうしてここまでユリウスが苦しまなければならないのだろうか。星晶獣の囁きに屈した罰だというのなら、どうすれば許されるのか。罪の重さは、きっとアルベールだって同じはずなのに。ユリウスを信じなかった己の方がよほど罪深いというのに罰を受けるのはいつだって彼の方だ。
「レヴィオンのためと言いながら、私はずっと自分の欲のために動いていた。君の傍から離れるのが怖かった。……けれど、私は決めた」
「なにを……」
「私は一度、この国を離れる。団長のところへ行き、今の私がどうなっているかを相談しようと思う」
ユリウスの言葉に「それは」と躊躇いがちに呟いたアルベールに彼は頷く。
「今、私がこの国を離れれば幸いとばかりに王殺しの大罪人だと言われるだろう。……まあ、それは間違いではないのだが。君の立場も悪くなり、復興にも支障がでてしまう。もう二度とレヴィオンに帰れないかもしれない」
「…………」
「けれど、君は私の帰ってくる場所を守ると言ってくれた。君は、私がこの国に戻ってくると信じてくれた。だから、なにも心配することはないのだと、アルベール、君のおかげで気づいたんだ」
「ユリウス……」
「君が私を信じてくれるように、私も君を信じている。だから、私がいない間レヴィオンを任せてしまっても構わないか? 私は、必ずレヴィオンに……君の隣に帰ってくると約束する」
「ああ、任せてくれ……!」
ユリウスを抱きしめている力を強くすれば彼も同じようにアルベールの背中にきつく腕を回す。
ユリウスがレヴィオンから去るのは今すぐの話ではないだろうとアルベールは思う。少なくとも今受け持っている領地の資源開発の問題が解決するまでは彼はこの国に留まるはずだ。けれでも、それはユリウスの中にいる星晶獣が暴れなければという前提であり、いつ状況が変化してもおかしくはない。
こうして触れ合える瞬間は様々な奇跡が連なって与えられたものなのだとアルベールは今更ながら理解した。それでなくともユリウスがレヴィオンを去ればしばらくの間は触れることは叶わないのだ。そう思うと、アルベールの胸に一つの我儘が浮かんできた。
「ユリウス……」
零れた言葉は切なさに溢れていて、同時に熱が籠もっていた。触れたい、触れて欲しい。
ユリウスも同じ気持ちなのか、二人の顔が近づき何度も口づけを交わす。ぬるり、と生暖かい舌が口内に差し込まれ、アルベールは拒絶することなく己のそれと絡ませる。
「ん、ん、ふ……んっ、ちゅ……」
もっととねだるようにユリウスの項に腕を回し、身体を隙間なく密着させる。彼もアルベールの後頭部に手を添えてキスを深くしていく。角度を変えて歯列をなぞられ、最早ユリウスの舌が触れていない箇所など存在しないと錯覚してしまうほどに翻弄される。歯の裏側、上顎などを舌で舐められると思わず肩が跳ねた。
ぢゅっ、と淫猥な水音を立てながら舌が吸われ、アルベールの背筋に悦びが走る。唇が離れたとき、はぁ、と感じ入った声を上げてしまったことにも気づかず、ひたすらに目の前の人物を見つめた。
「……星晶獣は私と一体化しているため、性交渉で君が寄生されることはない。だが、もしも不安だと言うならここで止めるべきだと私は思う」
ユリウスの瞳は不安げに揺れている。止めて欲しい気持ちと止められない気持ちがせめぎあっているのが一目瞭然で、アルベールに触れるのを躊躇っていたのはこのせいなのだろうと気づいた。
だが、ユリウスが寄生されることはないと断言している以上、アルベールには恐れる理由などないのだ。
「抱いてくれ、ユリウス」
ユリウスの手の甲に忠誠のキスを落としつつ、アルベールは言った。
「お前に触れたい、触れて欲しい。約束の証を、俺に刻んでくれ」
その言葉を聞いたユリウスは一度だけ深く息を吐き、アルベールの手を取る。寝室へ、と告げられた台詞に己は小さく頷いたのだった。
もつれ込むようにベッドへ倒れ込み、口づけを交わしながら互いの服へ指をかける。ユリウスの手際の良さに比べ、アルベールは少々時間がかかりながら彼の服を床に落としていった。二人とも身に纏う衣服がなくなった瞬間にベッドに押し倒され、アルベールは羞恥心から下半身を隠すように軽く膝を立てる。だがそれよりも早く足の間にユリウスの膝が割り込んできた。隠さないでくれと懇願されてしまえば、アルベールは拒絶することはできず、恥ずかしさで涙を滲ませながらおそるおそる足を開く。
「……ぅぁ……っ」
ユリウスの視線がアルベールの頭からつま先まで移る。真っ赤に染まっている顔や傷跡が残る上半身、反応し始めた性器など全てを彼に見られていた。頭がおかしくなったかと思うほど思考が働かず、けれども心は歓喜に打ち震えている。
触れて欲しい。アルベールがそう思ったときには無意識に言葉が口から零れていた。
ユリウスの指がそっとアルベールの胸板を撫でる。そのまま滑るように鎖骨の窪みや腹筋をなぞられて身体が震えた。皺の一つ一つを確認するかのごとくユリウスはアルベールの身体の輪郭に触れていく。じわじわと追い立てられているような感覚に艶やかな吐息が漏れ、唇を噛むことで声を抑えた。
「アルベール、声は我慢しない方が良い」
少しだけ困ったように名前を呼ぶユリウスの言葉にアルベールはぶんぶんと頭を振って対抗の意を示す。声を上げてしまったら、きっともう我を保てない。それがアルベールには恐ろしかった。
「君の声が聞きたい。私の名前を呼んでくれ、アルベール」
「…………ユリ、ウス」
昔からアルベールはユリウスの願いごとに弱かった。しかも切ない声色で言われてしまえば勝てる理由など一つもない。声を聞いて幻滅しても知らないからな、と憎まれ口を叩けば恋人冥利に尽きると返されてアルベールは大人しく白旗を上げる。先ほどまであんなにしおらしかったユリウスは、今はもういつもの様子のように見えた。それが悔しく、けれども“らしい”彼の態度にほっと安心したのも事実だった。
ユリウスの指が胸の突起へと伸びる。最初はくすぐったさに身じろぐが、指の腹で転がされていくうちに段々と違う感覚が湧き上がった。
「ふ、ぅ……やっ、ユリウス……それ、へんだ……」
ぞわぞわと未知の感覚が継続的にアルベールの身体を走る。いやだ、と拒絶した言葉は想像よりも幼い口調になり、それを恥じる間もなくユリウスが愛撫を激しくした。親指と中指で摘ままれ、人差し指で弄られる。その瞬間、ビクン、と大きくアルベールの身体が跳ねた。
「あ、あっ……! ユリウス、やめ……ん、んんっ、ふぁ……っ!」
「私には随分と君が気持ち良さそうに見えるが?」
「こ、の、っ……! あ、あっ!」
楽しそうに口角を上げたユリウスを睨む。アルベールは知らない快感に振り回されているというのに、目の前の人物はしおらしい態度から一転、余裕げなのが気にくわない。
ばか、と語彙力をなくして涙を流しながら罵倒するアルベールはシーツを掴んで快楽に堪える。その行動がユリウスを煽っているなど全く気づきもせずに。
「全く、これだから親友殿は……」
「はっ、なに……? あ、あぁ、あああ……っ! んっ、ひっ、うあ、ぅ!」
突起を擦り、なぞって、転がされる。ぷっくりと屹立した突起を元に戻すようにぐりぐりと潰されたときには、アルベールは甲高い嬌声を上げた。
愛撫はそれだけでは終わらず、散々弄られてじんじんと熱を持っている突起にユリウスは息を吹きかける。
「あ、ひ、あ!? ふ、ふ……っ、ん、ぁ……っ!」
過分な快感に足が空を蹴り、逃れようと反射的に身体が動いてしまう。恥ずかしい、気持ち良い、苦しい、嬉しいと相反する感情に思考が乱され、アルベールはただひたすらに淫らに啼いていた。
「ひっ!? あ!? や、やめ、っ……ふ、ぁっ!」
突然冷たいものが胸に触れたとアルベールが視線を向ければ、あろうことかユリウスが突起を舐めている姿が映る。赤子のように胸元に顔を寄せ、けれどちらちらと見える真っ赤な舌は淫猥な動きをしていた。無垢のようで官能的なその光景はもはや暴力に等しく、それなのに視線を逸らすことができず、アルベールは無意識に唾を飲み込む。
アルベールの視線に気づいたのかユリウスはフッと鼻で笑い、ぢゅっ、とわざと音を立てながら突起を吸った。
「ふあああ、あ、あ! ひ、ゃ、あ……! な、なめる、な……ぁっ!」
言葉では拒絶するものの、アルベールは自分の身体がさらなる快感を求めてユリウスの唇に押しつけるように背が弓なりになるのを止められない。見なくてもわかるほどに性器が勃起していることを自覚してしまい、恥ずかしさで死んでしまいそうだった。
初めてだというのにこんなにも乱れた自分に恐怖を覚え、アルベールはユリウスの名前を呼びながら両手を伸ばす。
「ユリウス、ユリウス……っ、こんな、こんなの、っ」
泣きじゃくるアルベールをあやすようにユリウスは伸ばされた両手をしっかりと掴み、愛撫を止めて頭を撫でる。その温かさに安堵していると頬に唇が落とされた。
「アルベール」
ユリウスは掴んでいるアルベールの手を自身の下半身に持っていき、屹立している性器に触れさせる。は、っと息を飲んだ己に彼は穏やかな笑みを浮かべた。
「乱れる君を見て興奮した私を軽蔑するかい?」
「そんなことあるわけない……」
「私は、私の行動で感じてくれる君が愛しい。この姿を見ることができるのは、恋人である私だけの特権なのだから」
「ユリウス……」
「怖がらなくて良い。もっと私を求めてくれ、アルベール」
ユリウスはそう言いながら身体を密着させ、二人の性器を擦り合わせる。
「あっあっあっ……あ、ああ……っ、ユリ、ユリウス……っ!」
ユリウスの指がしとどに濡れている性器に絡みつき、アルベールの手を透明な液で汚していった。君も触ってくれ、と熱願されるとおり己もまた相手の性器を握り、夢中で上下に扱く。
「ん、ふぁ、あ! あっあっああっ! あ、っ、く、ぅっ! はっ、あぁああ……っ!!」
「……っ、はっ……!」
ぐちゅぐちゅと二人の体液がいやらしい音を響かせる。アルベールの性器は今にもはち切れんばかりに硬くなっており、脳天を突き抜けるほどの快感にただただ喘いでいた。ユリウスの額から流れる汗や堪えきれない吐息さえも快楽の元となり、理性が保てない。
ユリウスはアルベールの性器の先端へと指を滑らせ、カリ首をぐるりと撫でた。
「あっ、それ、それ……っ、い、いいい、ユリウス……っ!」
気持ち良い、と本能のまま口走るアルベールの性器をユリウスは激しく扱く。引っ掻くように先端口に爪を立て、ぐりりと押し潰す。
「あ、あああ!? で、でちゃ、あ、う!? あ、あ、あ、ああああっっ!!」
鋭い痛みの中にある壮絶な快感にアルベールは止める間もなく精を放っていた。
「あ、は、あ……? ふ、っ……ぅ……」
射精後特有の倦怠感に放心しているアルベールを横目にユリウスは身を起こし、精液で汚れた手のひらを見つめる。それからなにを考えたのか、精液を一舐めしたのち「好ましい味ではないな」と一言呟いた。
「ユリウス!?」
慌てるアルベールを無視し、ユリウスは見せつけるように精液を舐め取り始めた。真っ赤な舌が己が放った白濁で彩られていく。唇は淫猥に濡れ、視線は誘うように細められていた。ユリウスの官能的な仕草にアルベールは身震いして呼吸が乱れてしまう。射精したばかりの性器に熱が集まり、再び首を擡げ始めていた。
「あ、ぁ……、っ、ユリ、ウス……」
ユリウスはナイトテーブルの引き出しから潤滑剤と避妊具を取りだし、ゼリー状の潤滑剤を手のひらにまぶす。それからアルベールの臀部へと手を伸ばし、緊張で身を固くした己に「大丈夫かい?」と声をかけてくる。
平気だ、と返答したアルベールだったが実際は鼓動が早鐘を打ち、今にも気を失いそうになっているとは言えるわけがない。それに、とユリウスの性器に視線を向ける。先ほどはアルベールだけが射精をしていてまだ彼は達してはいない。同じ男だからわかるが痛いほどに張り詰めている性器を見てここで止めようと言うのは拷問に近いだろう。
後孔の縁にユリウスの指が触れる。潤滑剤を縁に優しく塗り、まずは周囲をほぐすようにゆっくりと動き始めた。
「アルベール」
「んっ、ふ、ぅ……ん、ぅ……」
開いたままだった口の中にユリウスの舌が入ってくる。それがアルベールの緊張を解すためなのだとは鈍い己でもわかった。だからアルベールも下腹部で行われている行為を頭の隅に追いやるため、夢中で舌を絡ませた。
指がアルベールの後孔をトントンとノックし、それから少しずつ入り込む。反射的に逃げるような動きをした己をユリウスは宥めながら行為は続けられる。第二関節まで指が入ったことをユリウスに教えられるがアルベールはそれどころではなく、この時点で苦しくて仕方がなかった。
それでもできない、無理だと言わなかったのはユリウスを受け入れると決めたからだ。
「あ、あ、あ……っ! ん、んんっ、ユリウス……っ!」
「……すまない、アルベール」
アルベールの声に苦痛が混ざっていると悟ったユリウスは一言謝り、指で内壁を擦る。その刺激に一瞬だけ身体の力が抜けた隙を狙って指の数が二本へと増やされ、ゆっくりと内壁を押し広げていく。長い時間をかけ、三本目の指が入ろうとするタイミングでアルベールは息を吐いて痛みを和らげる。
はっ、はっ、はっ、と獣のような短い呼吸を繰り返し痛みを逃そうとするアルベールだったが、ユリウスの指がとある場所に触れた刹那、悲鳴のような嬌声を上げた。
「あ!? ああっ、あっ?!? な、に……っ!?」
アルベールの反応を確認したユリウスが前立腺を重点的になぞっていく。優しく転がすように刺激していたかと思えば、いきなり強く押し込まれてアルベールの頭は真っ白になった。
「ひ、ひっ、ひっ……! あ、ああ、ぁっ……! 押しちゃ、やっ、だめ、だ、いや、っ……! あっあっあ……っ!!」
すっかり勃起した性器からまた先走り液が流れ、先ほどの名残である精液が混ざって淫靡な色合いを醸しだす。このままではまた一人で達してしまいそうで、アルベールはユリウスの名前を呼びながら縋りついた。
「ユリウス、もう、欲しい……っ! ユリウスを、ユリウスが、ほしい……っ!!」
まだ入るかどうかはわからない──どちらかといえば入らないだろうとわかっていてもアルベールは叫ぶ。無理矢理でも、血が出ても構わなかった。今この瞬間、ユリウスが手に入るのならそんなことは些細な問題に過ぎなかったからだ。恐怖も痛みも、そんなものは愛しさの前には消え失せてしまうのだと、アルベールは初めて知った。
アルベールの必死な訴えにユリウスは後孔から指を引き抜く。彼もまた呼吸が荒く、興奮しているがまだ理性を保っているのかアルベールに後ろを向くよう指示する。後ろからの体位は君への負担が少ない、とユリウスは言うがアルベールは首を横に振って拒否した。
だが、とこちらのことを考えて渋る様子のユリウスにアルベールは告げる。
「言っただろう、約束の証を刻んでくれ、と。俺を抱くお前の顔も、声も、なにもかもを俺に刻んで忘れないように、」
してくれ、という言葉の続きはユリウスの口の中へ飲み込まれる。すぐさま貪るように舌を絡ませ、混ざりあった唾液を飲み込んだ。腕をユリウスの背中に回し、彼を受け入れる体勢を取る。
避妊具をつけたユリウスの性器がアルベールの後孔へ宛がわれ、指とは比べものにならない質量が内壁を押し広げながら入ってくる。身体が裂ける痛みに我慢できずに彼の背中に爪を立てた。痛い、と呟きながらもアルベールは懸命にユリウスを受け入れようと息を吐き、身体の硬直を解そうとする。彼も押し返すようにきつく締まる内壁を半ば無理矢理に押し進めていく。
時間をかけ、ユリウスの性器がアルベールの中に全て収まったとき、二人は息も絶え絶えで額には脂汗が滲んでいた。彼の気遣う声も聞こえないほどに放心状態だったがそれでもはっきりと感じ取れるものがあった。右手を己の腹部へ移動させ、アルベールは泣き笑いながら言う。
「ユリウスが全部入ってる……」
「アルベール……」
痛みだけではない涙を流すアルベールはユリウスの瞳にも涙が滲んでいることに気づく。どちらともなく口づけを交わし、軽く触れ合う。それだけでも満たされていたが、それでもこの先を望むのは当然であった。
ユリウスはアルベールの右手を再び背に回すよう言い、それから腰を前後に動かして性器をゆっくりと引き抜いていく。内壁が引きずられる感覚に確かな快感を覚え、艶やかな声を零す。浅瀬ぎりぎりまで抜いた性器が再び奥へ入り込み、中を馴染ませるような動きにアルベールは弓なりに背を反らせた。
「あっ、やっ、んくっ、んんっ……! あっあっあっ、んっ!」
痛みは当然ある。けれど、確かにアルベールは快感を得ていた。もっと、とねだるように自ら腰を浮かせてユリウスが動きやすい体位を取る。激しくなる動きと比例して肉がぶつかる音が大きく響き、聴覚も犯されていく。
視界にはユリウスしか見えず、己を抱いているのが彼だと強く実感させられる。感覚の全てをユリウスに支配されている。被虐嗜好はなかったはずなのに、アルベールはもっと支配されたいと思ってしまった。
「はっ、あっ! ああっ、んん……っ! す、き、すき、だ……っ! ユリウス、もっと……っ!」
前後の動きを止めたユリウスは奥をぐりぐりと押しつけるように刺激する。身もだえしながら性器を締めつけるアルベールに彼は小さく呻きながら前立腺を穿つ。こらえきれなかった少量の精液がアルベール自身の腹を汚した。
「ユリウス、ユリウス……っ! ふ、ああぁっ……! あっあっあっ、んんっ、ああ……っ、も、もうがまん、できないっ……きもち、いいっ……!」
「アルベール……っ、」
「お前も、きもちい、んっ、あっああっ! ユリウス、ぅ……! ふ、あっ! ああぁあ……っっ!!」
お前も気持ち良いか、と問う言葉は嬌声に阻まれ上手く言葉に出来なかったがユリウスには伝わったらしい。呼吸を奪うような口づけとともに同時に最奥を突かれ、アルベールは身体を震わせて熱を放つ。ユリウスの性器も大きく脈打ち、彼が達したことを感じて陶酔したように息を吐いた。
「アルベール……」
「は、ぁ……ユリ、ウス……んっ、ふ、ぅ……」
触れるだけのキスで呼吸を落ち着かせながら、ユリウスはアルベールの中にある性器を引き抜いた。避妊具に溜まった彼の精液に頬を赤らめながら、ユリウスがそれを処理するのを黙って見ていた。
──本当は、中に精を放って欲しかった。おそらくユリウスは星晶獣のことやアルベールの体調を考えて避妊具をつけてくれたのだろうとわかっている。それでも最後まで刻んで欲しいと思うのは我儘でしかないのだろうか。
ユリウスの名前を呼びながら両手を伸ばし、彼を抱きしめる。
「好きだ、ユリウス……。愛している」
近い未来、ユリウスと離れてしまうのはまだ少しだけ恐怖を感じる。それでも明日へ続く未来を得るためには仕方のないことなのだ。
「私も君を愛している。だから、待ってて欲しい」
「ああ、ずっと待ってる。お前が帰る場所を、俺が守り続ける」
信じている、と囁いて唇を重ねる。その刹那、一筋の涙が頬を伝うのにどうか気づかないでくれとアルベールは願うのだった。
ずっと昔に書いた初夜ユリアルのリメイク。前の話と全然違う風になったのは覚えています
百回言っても言い足りないなんですが神立は本当に最高だと思います。これだけで百個ネタが書ける
タイトルは佐藤ひろ美さんの楽曲「自由の翅」から。ユリウス視点のイメソンで、アルベール視点は霜月はるかさんの楽曲「life」だなと、この曲たちを聞きながらずっと書いていました