マレリリ小話毎日更新企画中その4(毎日とは言っていない)続きを読む 意外にもリリアは好意を寄せられることが多い。ディアソムニア寮では一番と言っても過言ではないだろう。見た目だけなら美少女と見間違う容姿をしており、それでいて面倒見が良い。ディアソムニア寮では珍しい陽気──あれを陽気の一言で片付けて良いものかそれはまた別問題だが──な性格も好かれる理由の一つだろうか。また、それとは反対に底が見えないミステリアスさや強者の余裕が垣間見えるところも惹かれる理由だと聞いたことがある。 マレウスもリリアが告白されているところを見たことがあるくらいには、彼はモテていた。 もっとも、リリアの料理の腕を知った者や実はかなりずぼらであることを知った者たちが「アレだけはない」と口を揃えて噂していることはマレウスも与り知らないことである。 さらにリリアは告白の断り方も上手であった。暴力に訴えるような輩は別として、相手を傷つけないように言葉を選び、青春の一ページにあるようなほんの少しだけ切ない、それでいて良い思い出になるように断るのがコツじゃとは本人の談だ。どんな断り方だ、とマレウスは思うのだが振った人物と振られた人物が仲良く談笑している場面を見かけたこともあり相当上手くやったのだろうと推測出来る。 なお、リリアが「はーーーー甘酸っぱい青春は良いのう~~! 若返る気分じゃ!! 命短し恋せよ若人たち……」などと考えてることは誰も知らない。わしってモテモテじゃな~~! とテンションが上がったまま酒を飲んで二日酔いになっているなどということは当人以外気づいていないのだ。 閑話休題。 さて、マレウスは学園に来て、他者と触れあい、そこで漸く「もしかしてリリアはモテるのか?」という事実に直面することになった。城の中にいたときはリリアが恐れられていたり森の中の小屋に住んでいたこともあり気づかなかったのだ。 リリアがモテていてとても困る。困っている、とマレウスは思う。なぜならマレウスもまたリリアに惹かれている者の一人だったからだ。 リリアが告白を受ける度に彼が告白を受け入れたらどうしよう、などと考えて外が雷雨になったこともあった。ちょうどマジフトの練習中でキングスカラーがこのトカゲやろうが!!!! と殴り込んできたのは忘れられない思い出である。 リリアがこれ以上思いを寄せられないようにするのに手っ取り早い方法は恋人をつくることだ。完全にいなくなるわけではないが、恋人が出来たと知れば告白する者はぐっと数を減らすだろう。そしてその恋人にはマレウスがなりたいと切実に思っていた。 受け入れられるかどうかは一旦さておき、それならば告白すれば良いだろうと思うかも知れないが、マレウスにとって告白はするものではなくされるものという意識があった。 マレウスは次期王である。それがどういうことかと言えば、マレウスは自分から行動を起こすと言うことが滅多にないのだ。マレウスはリリアと恋人同士になりたい=リリアが告白するべきという図式が頭の中でつくられるくらいには無知故の傲慢な王の姿をしていた。 流石に学園に来て成長したマレウスは今はそんな風には(少ししか)思ってはいないが、いかんせん告白の仕方が全く見当もつかない。ゴーストの花嫁騒動の際に少しは見本になるかと寮内で観察していたがそれはもう酷いものだったと記憶している。 マレウスがうんうんとリリアへの告白で悩んでいるとは知らず、彼はいつものごとく呼び出しを受けていた。どうやら今回は他寮の下級生らしく、ディアソムニア寮の談話室でこれから用事があると席を立つところにマレウスは出くわしてしまった。 笑顔のリリアをマレウスは素直に送り出せない。言葉を飲み込み、立ち尽くしてしまったマレウスにリリアはどうした? と声をかける。 その瞬間のことだった。 マレウスはリリアの腕を取り、衝動のままに叫ぶ。 「リリア! 僕はリリアが好きだ!」 格好いい言葉も、雰囲気の良いシチュエーションでもない。ただただ純粋な愛の言葉をぶつけるだけの告白。しまった、とマレウスが我に返ったときには大勢の寮生で溢れていた談話室には沈黙が流れていた。リリアも俯いており、マレウスは今すぐ茨の谷に帰りたくなった。 「おや、リリア先輩……?」 「リリア様……?」 シルバーとセベクが微動だにしないリリアに声をかける。ちらり、とこちらを見た二人がマレウスに話しかけないのは優しさだろうか。 二人に話しかけられてバッと勢いよく顔を上げたリリアの表情は、マレウスが想像もしていなかったものだった。 「~~~~~~~~~~~~~~っっ!!」 ボンッ! と効果音が聞こえてきそうなほどに顔を真っ赤に染めたリリアはぶんぶんと手を振りマレウスの拘束を解く。手が離れた瞬間にすぐさまマレウスから距離を取ったリリアは涙目だ。わなわなと身体を震わせて、リリアはマレウスに叫んだ。 「こ、こ、こんな場所で言う奴がおるかーーーーーーっっ!!」 心の叫びを上げたリリアは魔法で談話室から姿を消し、残されマレウスは呆然と立ち尽くす。 「……これは、振られたのだろうか」 マレウスの言葉に「いやどう見ても脈ありだっただろう!」と寮生の心が一致した瞬間だった。その中でも二人と交流の深いシルバーは、これから面倒ごとが起きそうな気配に深いため息を吐くのであった。畳む 2023.10.14(Sat) 00:30:41 マレリリ
(毎日とは言っていない)
意外にもリリアは好意を寄せられることが多い。ディアソムニア寮では一番と言っても過言ではないだろう。見た目だけなら美少女と見間違う容姿をしており、それでいて面倒見が良い。ディアソムニア寮では珍しい陽気──あれを陽気の一言で片付けて良いものかそれはまた別問題だが──な性格も好かれる理由の一つだろうか。また、それとは反対に底が見えないミステリアスさや強者の余裕が垣間見えるところも惹かれる理由だと聞いたことがある。
マレウスもリリアが告白されているところを見たことがあるくらいには、彼はモテていた。
もっとも、リリアの料理の腕を知った者や実はかなりずぼらであることを知った者たちが「アレだけはない」と口を揃えて噂していることはマレウスも与り知らないことである。
さらにリリアは告白の断り方も上手であった。暴力に訴えるような輩は別として、相手を傷つけないように言葉を選び、青春の一ページにあるようなほんの少しだけ切ない、それでいて良い思い出になるように断るのがコツじゃとは本人の談だ。どんな断り方だ、とマレウスは思うのだが振った人物と振られた人物が仲良く談笑している場面を見かけたこともあり相当上手くやったのだろうと推測出来る。
なお、リリアが「はーーーー甘酸っぱい青春は良いのう~~! 若返る気分じゃ!! 命短し恋せよ若人たち……」などと考えてることは誰も知らない。わしってモテモテじゃな~~! とテンションが上がったまま酒を飲んで二日酔いになっているなどということは当人以外気づいていないのだ。
閑話休題。
さて、マレウスは学園に来て、他者と触れあい、そこで漸く「もしかしてリリアはモテるのか?」という事実に直面することになった。城の中にいたときはリリアが恐れられていたり森の中の小屋に住んでいたこともあり気づかなかったのだ。
リリアがモテていてとても困る。困っている、とマレウスは思う。なぜならマレウスもまたリリアに惹かれている者の一人だったからだ。
リリアが告白を受ける度に彼が告白を受け入れたらどうしよう、などと考えて外が雷雨になったこともあった。ちょうどマジフトの練習中でキングスカラーがこのトカゲやろうが!!!! と殴り込んできたのは忘れられない思い出である。
リリアがこれ以上思いを寄せられないようにするのに手っ取り早い方法は恋人をつくることだ。完全にいなくなるわけではないが、恋人が出来たと知れば告白する者はぐっと数を減らすだろう。そしてその恋人にはマレウスがなりたいと切実に思っていた。
受け入れられるかどうかは一旦さておき、それならば告白すれば良いだろうと思うかも知れないが、マレウスにとって告白はするものではなくされるものという意識があった。
マレウスは次期王である。それがどういうことかと言えば、マレウスは自分から行動を起こすと言うことが滅多にないのだ。マレウスはリリアと恋人同士になりたい=リリアが告白するべきという図式が頭の中でつくられるくらいには無知故の傲慢な王の姿をしていた。
流石に学園に来て成長したマレウスは今はそんな風には(少ししか)思ってはいないが、いかんせん告白の仕方が全く見当もつかない。ゴーストの花嫁騒動の際に少しは見本になるかと寮内で観察していたがそれはもう酷いものだったと記憶している。
マレウスがうんうんとリリアへの告白で悩んでいるとは知らず、彼はいつものごとく呼び出しを受けていた。どうやら今回は他寮の下級生らしく、ディアソムニア寮の談話室でこれから用事があると席を立つところにマレウスは出くわしてしまった。
笑顔のリリアをマレウスは素直に送り出せない。言葉を飲み込み、立ち尽くしてしまったマレウスにリリアはどうした? と声をかける。
その瞬間のことだった。
マレウスはリリアの腕を取り、衝動のままに叫ぶ。
「リリア! 僕はリリアが好きだ!」
格好いい言葉も、雰囲気の良いシチュエーションでもない。ただただ純粋な愛の言葉をぶつけるだけの告白。しまった、とマレウスが我に返ったときには大勢の寮生で溢れていた談話室には沈黙が流れていた。リリアも俯いており、マレウスは今すぐ茨の谷に帰りたくなった。
「おや、リリア先輩……?」
「リリア様……?」
シルバーとセベクが微動だにしないリリアに声をかける。ちらり、とこちらを見た二人がマレウスに話しかけないのは優しさだろうか。
二人に話しかけられてバッと勢いよく顔を上げたリリアの表情は、マレウスが想像もしていなかったものだった。
「~~~~~~~~~~~~~~っっ!!」
ボンッ! と効果音が聞こえてきそうなほどに顔を真っ赤に染めたリリアはぶんぶんと手を振りマレウスの拘束を解く。手が離れた瞬間にすぐさまマレウスから距離を取ったリリアは涙目だ。わなわなと身体を震わせて、リリアはマレウスに叫んだ。
「こ、こ、こんな場所で言う奴がおるかーーーーーーっっ!!」
心の叫びを上げたリリアは魔法で談話室から姿を消し、残されマレウスは呆然と立ち尽くす。
「……これは、振られたのだろうか」
マレウスの言葉に「いやどう見ても脈ありだっただろう!」と寮生の心が一致した瞬間だった。その中でも二人と交流の深いシルバーは、これから面倒ごとが起きそうな気配に深いため息を吐くのであった。
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